学校のほうでもなんかやらなくちゃいけないんですよ。そこで現場の命の、牧場に入って、命の教育をうける、牛とつきあって命っていうのを感じてもらうというようなのを、ちょっとシステム化していきたいとか、僕は小説家ですから、文学者ですから、そういうものを、子ども達に分かる本を一冊、実は、このあいだ仕上げたばかりで、そのうちに出版になるんだけども。僕は今、第一次産業っていうのはこれからの日本にとって大きなポイントだと思ってます。
教育の問題だってそうやって、自然と触れ合うシステムがなくなったら、子ども達危ないんじゃないかっていうふうに。これから食べることの問題もやっぱりちゃんとやっていかないと、価格破壊、価格競争の中の、巻き込まれていって、安いかもしれないけれど、危ない物、遺伝子組み替えしたりしたものとか、安いということとか経済性を指向した物ばっかりを食べさせられるとどうなっていくかわからないわけですよ。第一次産業、食料っていうのは実は精神的な部分、自然っていう意味での精神的部分と自分たちの健康を守るってことの大切な部分とかたくさんあると思う。それから、海だってですよ、このままいけば、誰がみたって汚れていますよ。その中で生きていく魚が健康かっていうと、どうだろうっていうふうに思ってしまう。だから我々自身が健康になるためにですね、健康に生きていくためには、やはりそういう、山河を整える必要があると思うんです。それはふるさとを作るということですから、ふるさとをもう一回取り戻すということですから、そういうことにみんな一人ひとりできる場所でやっていかなければならないと思ってる。
僕がさっき話し足りなかったんだけれども、知床で蕎麦畑作っているのは、農業法人つくろうと思ったからで、でも農業法人つくると大変なんですよ。自由がきかなくなる。農業法人がいいのは土地を取得できるってことなんですね。でも、知床だったら、あまりにも離農者が多くて、空き地が多いんです。それを安く借りれば、その土地も使えて有効的にもなるし、土地を放棄した人にも多少の収入になると思って。形としては有限会社にしてるんですが、10ヘクタールくらい蕎麦作ってるんですよ。でもそれは結構売れ行きがよくて、そうやって少しずつ産物を増やしながら。もう一つ、散漫な言い方をしますけれども僕自身の老後のためにも頑張りたい。年とって帰っていく所を作りたいんですよ。ふるさとを。それは僕の小さな農園が僕のふるさとになるわけですよ。仲間がいて、そこに行けば食べ物が作れてね、楽しみもあるでしょ。口がだんだんすべりますけれどもビールも作りたい、ビール作ったら、チーズも作りたい。いろいろ、今度、シャケジャーキーを作ろうと思っているんですけど、それから、ポテトチップスも作ろう、ビートね、サトウダイコンのチップも作ろう、ひとつずつ増やしながら、そういうように、遊ぶように楽しみながら、僕自身はあと20年くらいかかって、老後の楽しみを築いていく。それはふるさとと言ってもいいと思うんです。