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時代の変化から生まれた今の生活の異常さに人間は、気づくべき…

去年の2月、今頃ですね、知床は、オホーツク海のウトロという所と反対側の羅臼という所があって、これは太平洋側なんですが、そこは流氷が入りきらないんで、船が出漁できるんですよ。それで、今スケソウダラが最盛期なんですが、辛明太のたらこを獲るやつです。でもスケソウダラはたらこになりたくなくて、辛明太になりたくて生きているわけじゃないんですね。タラの生活したいんだけども。

去年、船に乗せてもらって、5時くらいに、凍った海の氷を割って出漁する。南の海の、四国の人達には信じられない光景だと思うけれども、極寒のところで命がけの漁ですよ。で、今年船に乗ってびっくりしたんですね。5年まえにも同じ船に乗せてもらい、ちょっと網あげたら船の甲板が膝より上くらいまで全部魚になって、もうやめてくれっていうほど魚がいた、去年は全然魚が捕れなくてね、もうほんとに魚が何匹か数えれるんですよ、上で船頭がカウンティングやってね、そしてその船だけかと思ったら、その日だけ不漁かと思ったら、ぜんぜん、もうダメだって言ってる。その前の年に3割くらい減船してる、減船っていうのは、もう漁師辞めるってことですから、これは大変なことなんですよ。船もなくなってきて、それでも生産調整しながら生き延びようとしているけれども、もうダメだって感じなんです。で、井元さんの海が、僕どんな感じなのか、よくわからんのですが、しかし全国的に近海の漁っていうのは、すごい落ちてると思うんですよ。僕の知ってる限りですよ。魚がおらん。僕がさっき広島の話しましたけれど広島の海は藻がもうなくなってて、人口の海浜が90何%、天然の海浜がないんですよ。つまり海も川もです、さっき僕は川の話したように浄化装置なんですね、砂浜と、砂と水がからまって、水がきれいになっていくとか。それが全部コンクリートになってるから、海が回復しようがない。

ここから本題になるんですが、あっちこっちに弱ってしまっていてね、もうこれ環境問題とか言ったって、自然そのものがですよ、第一次産業が立ち上がらないくらいに弱ってきちゃったら、もう環境問題もなにもない。それどころじゃない。自分たちが生存する事もできないんじゃないかっていうね、そんな気分がないわけではない。僕自身がですね、海、山を巡っていて、ある結論に達した、っていうか、こういうことかなあって僕自身は思って。それをみんなに強要するわけではありませんけれども、第一次産業が崩壊したら自然を守るどころじゃないと僕は思ったんですよ。市民運動が自然を守ってるんじゃないと思ってるんです。本当に見守ってるのは、井元さんのような漁師ですよ。漁師は毎日海に出て、汚してもいるんだけれど、両面があるけれど、やっぱり海を守っているのは漁師だと思ってるんです。

 

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