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ただ、泥に顔を浸けてるみたいになっちゃうわけですね。そういう形によって、食べる、生活の形態が変わる、これ、棲み分けです。自然のものは、全部そうなっとる。で、これは見事ですね。この辺にいる、すずめ、小鳥のあの形は、森の中に入れる形、木と木の間に素早く、すばしっこく動いて、中にいる虫を捕る形ですよ。鶴のように大きかったら、そんなのできませんよね。でも脚は千鳥のように丈夫でないから、やっぱりこういう森にいるのにふさわしい形になっている。同じ鳥でも多種多様の形があって、これは自然の摂理というか、自然のうまい組み立てですよね。構成ですよね。それもう、全部がそうなっている。

このあいだ、その前田一歩園という阿寒の山で木をずうっと植えていったらば、木が大きくなったら川が生まれたって言うんですよ。川がでてきた、生まれた。これは感動的だったんですけども、よくよく見たらば、水の流れている所に砂が溜まっていてね、もともと川があったところだっていう。それを牛を放牧するために木を切ってしまったんで、川が消えた。そして、しかし、また木を植えたら川が蘇ってきたっていうことを聞いたんですけどね。川も、一点の無駄もない、全部山の奥から水が流れて、一筋の流れが合わさって渓流になっていく。そこから岩を咬んで走り出した水がゆっくりと流れて海まで注ぐわけです。川は、たくさんの命がいるでしょ。もちろん魚もいるけど、川岸に植物が生えている。

 

水が見事に浄化されていくことを知り、

一本の草の力って

ものすごいもんだと思ったんですよ。

 

岩木川 という青森の川を、これは、白神山地に発する川ですけど、ずっとカヌーで下ったことがあるんですよ。ゆっくりと下って行ってね、上の方はダムだらけなのでカヌーはちょっと無理なんだけども、途中から弘前という町があって、リンゴ畑の中を走っていく、リンゴの香りの風が吹いてくるんで、気持ちがいいんですね。最後の所、十三港という"とさみなと"とも読むんですが、昔そこに安藤水軍という一族がいて、たいそう栄えたところなんですけども、それは古文書に残っているんです。それから発掘調査でも判るんですけども、川が突然広ーい川になるんですね。そしたら、葦の原に入るわけですよ。葦の原の中に川が真ん中流れてあとはもう、葦の草原というか、水はあるんですよ、田んぼのような状態になってるんですが泥のような色の水で、その川が流れているんだけれども葦の周りだけ、水が透明なんですよ。ああ、すごいなって思って。頭では解っているし、まあ僕は、実はそういう風景は何度も見てる。北上川の河口でも見てるし、あっちこっちで見てるから、ある程度知ってるんですけども、葦というのは"あし"といったり、"よし"といったりしますが、水を浄化しているわけです。これは植物ですから、栄養とらなければ生きていくことはできない、植物も食べますよね。その栄養というのは、リンや窒素やカリであります。そのリンや窒素やカリがね、これは植物の栄養の元であると同時に水の汚れの元であります。リンや窒素やカリが増えたから富栄養化した、水が汚れたということになるわけでしょ。ところが植物はその汚れの元を一生懸命に吸って体に取り入れているわけです。

 

 

 

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