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そこは"デトライタス"といって、有機破砕物、(非常に栄養豊かな泥というと怒られるんですが)潟というんですが、これはもともと阿蘇山の火山灰が溜まったもんだっていわれていますが。非常に栄養価の高い、いわばミルクのようなものなんです。そこにたくさん生き物がいる。単位体積あたりの生物の個体数は世界一だというふうにいわれている所です。ゴカイとかイソメとかシャコなんかもたくさんいて、干潮になってから水が引いてから、表面の泥をスコップでしゃくると穴がたくさん開いていてね、そこに子どもの時に習字に使った古くなった筆を刺しておくと、シャコが苦しんでもがいて、筆を持ち上げるですね。持ち上げた拍子にパッと手をつかんでズルズルズルっと引っ張り出す、シャコ漁とかあるんです。片っぽだけの手だと、とれてしまうから両手をつかまなければいけないんだけども。本当におもしろい、いろんな魚が、ムツゴロウなんかもいますね。

そこで僕は鳥を見ておりました。そうするとね、鳥はね、いろんな鳥がいるでしょ。まず、千鳥という、柔らかな泥の上を、潟の上をパラパラっと走って、早く走っている鳥がいる。千鳥というのは、千鳥足って酔っぱらいの千鳥足ってフラフラ歩いて、おっ転ぶぞ、と思うとうまく立ち直って、また、こっち行って、また、転びそうになって、また立ち直るというのを千鳥足といいます。千鳥というのは千鳥足なんですね。こっちに行くと見せかけて、フェイントかけて、こっち行くんですよ。そうすると、ああ、向こう行くなあと思って安心したカニなんかが捕まって食べられちゃうというね。そういう生き方をしている。表面にいるものを食べるわけです。早い動きと短いくちばしで、はやく動いて捕まえるわけです餌をね。

 

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生き物はそれぞれ、そこに生きていくために

ふさわしい形になっている。

自然のうまい組み立てです。

 

一方、シギという鳥がいる。これは脚が長くてくちばしが長いゆっくりとした渡り鳥ですね。あれはずーっと潟にくちばしを刺して中にいる虫を食べます。ゴカイとかイソメとかそういうものを食べる。早く歩いているカニとか飛びハゼとかああいうものは捕まえることができない。ゆっくりとした動きで、しかし千鳥はくちばしが短いからゴカイやイソメは食べられないわけですよ。こうやってもくちばしが届かないわけです。

 

 

 

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