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命の活動というのは、一刻も止まない。

そして、森には多種多様の木が

生えているから、強いわけです。

 

例えば多種多様の植物が生えるというのが山の特性でしょ。いろんな生き物がいてですね、そして根っこもいろんな形に張っているわけですよ。杉というのは、針葉樹というのは、どちらかというと、ゴボウ根といって垂直に張ります。広葉樹というのはどちらかというと横に張る。ケヤキの走り根とかいって、2mも3mも横に拡がって張ります。それからモミジ、岩の崖のところにモミジがね、網をかけたようにして根っこを張ってしがみついて、ガッチリ岩にしがみついている。ああいう根っこの張り方がありますでしょう。多種多様の根っこが生えているわけです。そして、僕はまた、あっちこっち行った話で恐縮ですけども、先週か、白神山地というところに入って山の中雪まみれになって、山奥に入りました。ブナの木が、すごいブナっていうのはいいんですね。葉っぱは秋になると黄色に染めて、葉っぱを地面に落とします。その後雪が降って、今頃その落ちた葉っぱは雪に押し潰され、だいたい雪の下は零下にならないんですね。せいぜいなっても零度くらいですね。微生物がその葉っぱをゆっくりと分解している最中です。そしてまたそれが山に還っていく。で、山の土壌というのは根っこが多種多様に張っている、またそういう微生物の活動が活発でスポンジのような状態になっているわけです。柔らかい状態、空気の通りのいい状態になっているわけです。そうするとね、雨が降ったらば、また今雪で雪が溶けたらば、そのスポンジのような土壌に水が浸みていくわけですね。これが保水力ですよ。地面がカチカチだと、そこへ水が溜まっていかない。ものすごいたくさんの水がこの山の表面のね、木の根の周りに溜まっている。

 

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それからこの白神で聞いたんですが、議論になったんですが、春先雪が溶けると、ブナの木の根元から雪が溶けてくるんですね。それで、水をスーと吸い上げるその音が聞こえると言う人と聞こえないと言う人がいる。音はするんですよ、耳をつけると。これは、枝が風をはらむ音の、気配が響いてこっちに下の方まで届いてくるんだと思っているんですが。青森のまたぎ、熊撃ちのまたぎと話していて、「絶対に水を吸い上げる音がする」って言うんです。「その証拠に幹を切ったらば、切り口のところに水がいっぱい噴き上げる、それは見事なもんだよ」って言われて、それは見たことないなって、僕は思いましたけどね。

 

 

 

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