また、近年、航空運賃やツアー料金などの価格破壊によって旅行費用にも割安感が感じられるようになっており、アンケートの自由回答欄にも“飛行機を利用して気軽に来られるという点で当地を選んだ”といった回答がみられた。低価格化は距離感を縮める効果をもつものであり、近畿圏に次いで多い(といっても現在は1割に満たない微少なシェアではあるが)関東、東海地方のシェア拡大を図るための宣伝・PRの強化も重要である。
2] 客層・ニーズの多様化に対応した宿泊機能の多様化
温泉地の宿泊施設は団体から個人客にシフトしたとはいえ、1泊2食付きは定番であり、学生が含まれる若年層や若い子連れ家族にとっては費用負担が大きいため、宿泊や連泊が困難な面がある。また、宿泊機能自体にもアウトドア、グルメ、健康、癒しなど多様な志向への対応も求められている。そういった意味から、温泉観光地はキャンプや寝食分離システムなど多様な宿泊の選択肢を持ち、幅広い客層・ニーズに対応していくことが顧客を拡大するうえで重要になってくる。
3] 体験メニュー等、企画力の増強による観光魅力の創出
本町の観光メニューの評価で、日帰り客、宿泊客ともに「産業体験」、「海洋・漁民文化体験」、「行事体験」といった体験機能に対する評価は低い結果が出ている。また、「自然体験」についても、“海水浴”や“海岸景観の観賞”は定着しているが、ハイキングや野外・自然学習、キャンプ、釣りなどはほとんど行われていない。つまり、資源活用の面からは、目に見える資源をそのまま活用しているに過ぎず、人が介在して新たな資源を掘り起こしたり、地域の自然や歴史・文化、産業を町外の人に紹介(見学、体験)するシステムが弱い。このことは、アンケート結果にみられる社寺、旧跡など歴史的資源や、博物館、美術館など学習施設の利用の少なさにも共通することであり、企画力を増強してこれら資源・施設の魅力アップと利用促進を図る必要がある。
4] 味覚、特産品の開発・宣伝の強化
本町の味覚資源や特産品、地場産品に対する期待は、宿泊客において「新鮮な魚介類」を求める志向が高めであるほかは概して低い。
本町には集客力の高い「とれとれ市場」があるが、ほかにも花卉栽培や備長炭生産、農産物の朝・夕市など、観光の軌道に乗っているとは言い難いが、特定のマーケットを得ている産品や直売システムがあり、それらを観光と結びつけ、商品開発や安定生産、宣伝を強化していく工夫が必要である。
5] 椿温泉の個性化と新規客層開発
椿温泉は、湯治場としての性格を有していた時代からの固定客である高齢者の利用が多い温泉地であるが、近年は1泊2食付きの料金システムが一般化されたため、その特色は失われつつあり、また、白浜温泉から離れた立地で、目玉的資源・施設に乏しいことから、白浜温泉来訪客の立ち寄り促進や宿泊客の受け入れ連携もしにくく、入込は減少傾向にある。