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問題とすべきは、可能性への具体的検証やめぼしい成果もないまま、“基地経済からの脱却”というスローガンがいつまでも掲げ続けられたまま今日に至っていることである。年間約700億円の軍用地料はいろいろな面で沖縄経済に影響をもたらすとともに、一方では、米軍基地は雇用を創出し続けている。こうした状況を、長きにわたって沖縄の経済を支えてきた大きな要因として直視する必要があろう。問題は、基地経済に寄りかかりすぎ、慣れすぎて、時代にふさわしい新たな事業展開への創意工夫や努力を積極的に展開することが少なかったこと、事業経営者や商人(あきんど)としてのノウハウの蓄積などが乏しかったことにある、と言えよう。

そして、沖縄では、観光・リゾートが経済のいま一つの柱である。全国の観光地が不況の影響を受けて低迷している中で、1998年の沖縄観光入り込み客数は412万人と過去最高を示しており、また、それ以前も順調に伸びてきた。この要因は、旅行業者が企画・販売しているバックツアーの料金が下がったこと、旅行業者が旅費単価の高い遠隔地向け旅行商品の販売に力を入れだしたことなどによる。航空会社も同様であり、時間がかかる船舶を除けば、代替交通機関がなく他業種との競合がない沖縄は、競争により価格を設定する必要があまりないため、料金コントロールがしやすい利点がある。旅行業者と航空会社による沖縄キャンペーンは、国内観光市場の目玉商品となっている。

中部圏は御嶽、城跡、エイサー、闘牛、スポーツ・レジャー施設など、ソフト・ハードにわたる資源に恵まれていながら、観光・リゾート客増の効果がみられるのは、西海岸地区に多い。圏域全体からみると、素通り観光の感が否めず、沖縄全体では観光・リゾート客が増えていても、この効果を導入できないままにある。中部圏は、宜野湾、北谷、嘉手納、読谷の海岸地区や内陸部の市街地、さらには中城湾、与勝半島につづく広範な魅力をもつ地域であるから、地域間の連携を図りつつ、圏域全体の発展を目指すべきである。

圏域市町村が一体となって、今から5年ほど前に、世界児童演劇フェスティバルを開催した。これには、世界各国から約30グループの参加があり、好評を博した。また、ロックコンサートやマラソンなどが、年々継続的に、圏域として取り組まれている。今後とも、一体的な連携・協力により、圏域の良さを活かし、そうした取組の内容・メニューの充実を図ることが期待される。知恵をだしあい、いっしょに工夫して取組がなされることにより、圏域のイメージが具体化してくるであろう。

 

 

 

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