イ 店舗構成と店舗との契約システム
通常、複合型商業施設は、核となるキーテナントと複数の専門店(小売店舗)から構成されている。この専門店は、キーテナントの系列や関連企業だけでなく地元の小売店や大手小売業の子会社等から選定している。しかしながら、最近はキーテナントの関連会社が入店する場合が多くなってきている。その理由としては、融資条件が厳しくなり地元の店舗では入居資金を十分に用意できない場合が多くなってきているためや、キーテナントが店舗のコンセプトや客層にあった店舗構成を図ろうとしているためである。現状をみても、店の客層にあった専門店の売り上げは良好である。
トリアス久山では、テナントの選定に当たって、業種構成を業態毎に1店とし、1]ロープライスで提供できること。2]ワンストップショッピング機能を有すること。3]物販に特化するのではなく、アミューズメントやエンタテイメント等をとりこむこと。の3つの条件を重視している。条件をみたすのであれば、企業の国内外は問題にせず、実際外国資本の企業も徐々に進出してきている。世界最大の会員制ホールセールクラブ(100%メーカー直取引の商品を大型の倉庫型店舗で会員向けに販売)のコストコ社や、シネマコンプレックスを運営するバージン・シネマ社といった、日本初出店の外資が立地し、既に営業を開始している。
入居する専門店との契約システムは「賃料方式」と「ロイヤリティ方式」とに分けられるが、この2つを併用しているケースもみられる。「賃料方式」は安定した収入が得られる反面、それ以上のコミットが各店舗に対してできにくいという面がある。一方、「ロイヤリティ方式」の場合、売り上げによって店舗間の差が大きくなる問題があるものの、入居店舗の売り上げ増がキーテナントの収入アップにもつながるということで、キーテナント側が入居店舗に対して営業努力を積極的に働きかけていけるという面を持っている。近年では、商業競争の激化で、一定の売り上げを計上できない店舗や、施設全体のコンセプトに馴染まない店舗は撤退させるという厳しい条件を付ける傾向にある。キーテナント側からみれば、消費者の嗜好が大きく変動・多様化し、3年以上先の需要を見越せない状況のなかで、消費者需要の高いテナントへの入れ替えがしやすい「ロイヤリティ方式」は経営的にも有効な手法であり、重要な意味をもっている。経営努力を要求される専門店にとっても、新規出店の際、イニシャルコストが少なくて済むという面でメリットがある。
ウ 商圏の考え方と顧客の志向
商圏設定に関しては、大店法に示してある店舗面積による商圏設定範囲が一つの目安となるが、一般には市街地中心部の立地であれば、「10分(歩いて10分、車で10分)」が商圏の基準といわれている(図表3-17参照)。
しかしながら、近年のモータリゼーションの進展により、郊外型の大型店で魅力的な施設であれば、車で30分〜1時間くらいは十分に商圏になり得る。具体的な事例をみてみると、アピタ市原(トラディショナルタイプ)では、30分〜1時間程度の距離圏を商圏と設定している。トリアス久山(エコノミータイプ)は、30分以内を主力商圏、40分以内を拡大商圏と想定しており、これを距離換算すると福岡市東部を含む20km圏であり、90万世帯、200万人を包含している。テーマタイプのマイカル桑名の商圏は、高速道路利用で1時間、50km圏と、人口880万人となっている。