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なお、緊急通報システム以外の分野では、住民実態調査の自由回答において以下のような希望や意見があった。

○ 安否確認・声かけ:週1-2回はボランティアの訪問が欲しい。

○ 徘徊老人を識別する統一の目印があるとよい。

 

(3) 見守り・安否確認システムの問題点と課題

・電話によって安否を確認する消防方式の「緊急通報システム」では、高齢者の潜在ニーズに十分に対応できない。

・「緊急通報システム」の利用希望は、行政サービスの要件を外れる日中独居者にも広がりをみせているほか、緊急通報システム以外に実際の訪問を望むケースなど、潜在するニーズにも対応する必要がある。

・高齢者等に潜在するニーズ(相談や話し相手/実際の訪問など)や新たなニーズ(徘徊老人の探知・保護)に対応するため、これらのニーズを整理し、徘徊探知器等の情報通信機器の開発動向を視野にいれ、地域社会としての「見守り・安否確認システム」の構築を検討することが課題となっている。

 

ア 現行緊急通報システム見直しの必要性

「緊急通報システム」において「消防方式」を採用する最大の利点は、119番通報によって通報と同時に救急車が出動する点にあるが、通報実績からみると緊急事態での通報は少なく、むしろ相談や話し相手を求めるケースや誤報が多いのが実態である。これが、一方では消防本来業務の妨げとなり、他方では誤報として処理されがちな高齢者の日常的な相談等に十分対応できないという問題を生じている。

これを解消するためには、小鹿野町が一部の利用者に限定して実施している「相談電話を在宅介護支援センターで受ける」というような、高齢者の潜在的な相談ニーズに対応するシステムを確立することによって、一方では高齢者が日常的に機器を使いこなすことにより万が一の緊急通報が容易になり、他方、受信する側も日常的なコミュニケーションを通して、個々の高齢者の状況が判断しやすくなるといった条件を整える必要がある。

また、現在の行政サービス(緊急通報システム)はひとり暮らしの高齢者に対象を限定しているが、利用希望が広がりをみせている日中独居高齢者のニーズにも対応する必要がある。

 

イ 潜在ニーズにも対応できる地域社会としての見守り・安否確認システムの構築

平成12年度の厚生省予算要求では、新たに「徘徊高齢者家族支援サービス事業」としてGISなどの探知機器が要求対象となり、東松山市では先進的に「俳個高齢者等SOSネットワークシステム」の構築に取組んでいる。これらの動きは、徘徊高齢者の探知・保護という課題に対応する見守り・安否確認システムを構築することの必要性が、次第に社会的なコンセンサスを得つつあることを意味しよう。

そもそも、高齢者の見守り・安否確認という「ニーズ」は、それを必要とする高齢者本人のニーズというよりも、彼等を見守るべき家族や「地域社会」のニーズであるというべきかもしれない。

 

 

 

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