(3) 外出支援(移送)サービスの問題点と課題
・デイサービスセンターの送迎サービスは市町村実施が多く、介護保険制度導入後の対応が課題となっているが、新規開設のセンターでは外部サービスが利用される傾向があり、サービス対応の新しい方法として注目される。
・デイサービスセンター以外の高齢者保健福祉施設等の入退所時送迎サービスについては自治体が実施するケースは少ないが、デイサービス利用者以上に施設入退所者には福祉車輌を用いた専門の送迎サービスが必要と思われる。
・モデル地区では通院など新たなニーズが確認されたほか、会食の際の「移動手段の確保」が課題として指摘されるなど、顕在化しつつある高齢者のさまざまな外出(移動)ニーズヘの対応が課題となっている。
・欧米では高齢者や障害者など移動制約者に対するスペシャル・トランスポート・サービスが普及しているが、わが国ではこの分野の蓄積がなく、運輸省がモデル事業に着手した段階である。
・わが国でもリフト付き車輌のほか、助手席や後部座席の回転(90度)シートなど「福祉車輌」の開発が進み、急速な普及の兆しを見せており、デイサービスセンターの外部サービス利用など福祉車輌を用いた新しい福祉移送サービスの出現が促進されている。
・移動制約者のための公共交通網体系や市場動向等を見定めるとともに、顕在化しつつある住民ニーズを整理し、今後の行政サービスのあり方を検討することが課題となっている。
ア 狭義の移送(=施設送迎)サービスの実施状況
厚生省の従来の定義による「在宅福祉サービスを提供する場所への送迎(移送サービス)」の実施状況をみると、デイサービスセンター(日帰り介護施設)の99%以上が基本事業である送迎を実施している(図表4-4)。
送迎の実施形態をみると(図表4-5)、デイサービスセンターが送迎を実施しているケースが9割を超えるが、モデル地区調査では(福祉)車輌が行政から無償貸与され、デイサビスセンターが運行管理しており、全国的に同様のケースが多いのではないかと思われる。
しかし、平成8年以降開設分をみると、市町村がデイサービスセンター以外に委託するケースが増加傾向をみせている。この場合も市町村予算での対応であろうが、デイサービスセンター以外の外部サービスが利用される傾向にある点が注目される。
デイサービスセンター以外の高齢者保健福祉施設への入退所時の送迎サービスの実施状況は、統計的に把握できない。高齢者保健福祉施設への入退所者の送迎は、デイサービスセンターへの送迎以上に、身体状況に応じた福祉車輌等の手配が必要なケースが多いのではないかと思われる。モデル地区では、自治体及び老人保健福祉施設による送迎サービスの実施は少なく、家族等による送迎が主流ではないかと思われる。この傾向は全国的にも大勢であり、今後、その対応のあり方は検討すべき課題ではないかと思われる。