日本財団 図書館


これに伴い超過負担の割合も上昇を余儀なくされることになり、市町村財政がきわめて窮迫することが予想されている。それゆえ、直接的なサービスの供給主体となる場合には、これまで以上に自治体は、サービスの質を落とさずにいかに安いコストでサービスを生産するか、という内部的効率性の観点からサービス提供システムの変更を迫られるのは必至である。

第2に、新たな行動規範を前提とすれば、基本的に、サービス提供主体は民間セクターに傾斜することとなり、自治体のサービス提供への直接的関与は減少していくものと考えられる。従来のサービス量に応じてニーズを押さえる需要抑制型の措置制度から、市場と消費者の需給バランスを促す需要創造型の介護保険制度への転換は、行政による介護サービスの直接的提供を縮小させ、もっぱら市町村は、介護サービス事業者の育成と誘致、事業者間の連携と調整等に力が注がれることになる。これらの努力によって、地域におけるサービスの多様化をすすめ、地域社会のニーズに合ったサービス供給、あるいは利用者の最適な選択を促す、という外部的効率性を高めることも要請される。つまり、無駄なサービスの排除によって社会的コストを抑えること、といえるだろう。

これら二つの効率性の向上が同時に図られてはじめて、効率的かつ効果的な自治体財政運営につながるものと考えられる。

そもそも、大半の市町村では、介護保険から漏れるケースや既存サービスの打ち切りが困難なケースに対して、今後の政策方針などにより、上乗せ、横出し等の単独事業という形でサービスの多様化に取り組まざるを得ないのが実情である。こうした問題を解決していくためには、自治体として住民個々人の自助努力に力点を置く場合と、コミュニティケアとして力点を置き解決していく場合の二つに大別される。

前者の場合には、個人の自助努力を中心とした施策対応となるため、自治体の超過負担を招くことはないが、そのための多様な支援方策がセイフティ・ネット(安全網)として準備されなければならないだろう。一方、後者の場合には、明らかな超過負担を招く可能性が高いので、活用可能な社会資源を動員しながらサービスの多様化をすすめ、最終的には利用者ニーズとサービスの最適化を実現することで効率性を高めていくことが求められる。このとき、効率性の内実を規定するのが、サービスの多様化といえるだろう。

 

3 市町村行政の新しい役割

 

上述のような制度改革の方向性を前提にしたとき、行政には従来にはない、あるいはあまり重視されなかった新しい五つの役割が課せられるものと考えられる。

 

(1) 総合的な地域福祉システムの構築

市町村は、住民ニーズを的確に吸い上げながら住民本位を前提とし、保険給付などをスタンダードな水準として、これに上乗せ・横出し・単独事業、さらには地域の互助、自助努力という三つの資源を組み合わせ、地域にかなった最適な形(ローカル・オプティマム)で自治体独自の総合的な地域福祉システムを設計し、その速やかな運営と管理(コミュニティ・ケアマネジメント)を遂行していかなければならない。このうち、市町村は、これまでも国の事業に「上乗せ」や「横出し」を行うなど、創意工夫をこらした事業を展開してきたが、その重要性は一層増すものと考えられる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION