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さらに、その内容についても、地球環境問題の重要性を抽象的に伝達するようなケースが多く、具体的数値等を用いたインパクトのある内容とは言い難いものが多かった。

学校教育については、教員養成の問題や他の学科との関連等もあるとは思われるが、総合的な学習の時間の活用にとどまらず、正規の科目として地球環境問題を含めた環境問題を採り上げ、できるだけ子供の頃から、地球環境問題の重要性、そのために自らがなすべきこと等についての教育・学習を行うこととすべきであり、そのために必要な、国・都道府県・市町村の関係の見直しや、教える者の研修・養成等に早急に取り組む必要がある。

また、普及啓発については、自治会等を活用した草の根レベルの普及啓発をはじめとする地方公共団体での啓発活動も重要ではあるが、むしろ、マスメデイアを活用して全国的に大規模に展開することも大変効果的である。欧米においては、政府が多額の費用をかけて大規模なキャンペーンを展開している例もあるように、我が国においても、政府の施策として、そうしたテレビをはじめとするマスメデイアを大規模に活用した一大キャンペーンを定期的に実施していくことが必要であり、また、少額の経費をかけての地道な普及啓発活動を積み重ねていくよりも、合理的かつ効果的であると考える。

 

(3)おわりに

地球環境問題は、人類の生存に直接関わる問題であり、我々個々人のライフスタイルや社会経済システムを転換させていかなければならない問題である。一方では、遠い先の問題であるとか、日本とは関係のない問題であるとか思われがちであり、どうしても目先の利害関係や生活の利便性を優先させ、具体的な対策が遅れがちとなる性質の問題でもある。

しかしながら、地球環境は日々刻々蝕まれており、このまま放置すればそう遠くない将来に取り返しのつかない事態を招くことは明らかである。しかも、その時になって、事の重大性に気付いても、最早、解決のしようもなく、いわば座して滅びるのをまつしかない問題であることもわかっている。ただ我々の救いは、人類は先を見通す能力を備えていることであり、自らが構築してきた大量生産・大量消費のシステムを変えていく能力を備えているということある。

都道府県をはじめ、国や市町村も含め、各行政主体は、人類がそうした能力を活用し、資源循環型の社会を構築していくという観点から、それぞれが所管する地域の社会経済システムや当該地域の住民のライフスタイルの有り様等に関する具体的なビジョンを持ち、目先の利益にとらわれることなく、現行の制度や法体系を洗い直し、豊かな22世紀を迎えるために21世紀を真に環境の世紀とするべく、我々の責任の重さを十分自覚し、将来を見据え、新たなシステムを大胆かつ積極的に、また、強靱に、構築していかなければならない。

 

 

 

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