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環境問題に関わる過去の経緯をみても、この規制的手法なしには環境問題の解決は進んで来なかったという実態は否定できず、その導入時期や内容については社会経済状況を踏まえ検討すべき点は多々あるものの、避けて通れないと考えられる。

 

ウ 国民意識を変える施策の展開

先に述べたように、地球環境が危機的な状況にあり、循環型社会を構すべきだという一般認識は、国民の間に広く浸透している。

しかしながら、個別具体の行動をみてみると、個々の国民1人ひとりが地球環境問題を自らの問題と考え、それが具体的行動に結びついているとは言い難い。

例えば、クリスマスの時期に、全国各地で華やかなイルミネーションが飾られている。これは、日常生活に必要不可欠なものとは言い難く、省エネルギーの観点からみれば、極めて問題のある恒例行事だと思う。しかしながら、その時期になるとタウン情報誌や、マスコミも含め、その華やかさを大きく取り上げるものの、地球環境の視点からの批判や廃止を求めるような意見は聞かれない。

また、環境の世紀と言われている21世紀の幕開けの第一歩といえる西暦2000年の記念行事として各地で行われたイベントの中でも、イルミネーションやレーザー光線等を使用したものが多く見られたところであるが、それらについても、きれいさとか華やかさについての評価は多数あったものの、環境の世紀にふさわしくないといった批判的意見は聞かれなかった。

これは1つの象徴であると考えられるが、その他、RV車の流行や、自家用車の大型化の進行等にも見られるように、個々人の行動を具体的に転換するまでには意識レべルは高まっておらず、また、地球環境問題を解決するためには、生活上の利便性を犠牲にせざるを得ないことや、必要な費用を要すること等、コストを負担しなければならないとの意識も浸透していない。

その原因としては、地球環境問題が、地球全体という極めて広い範囲に及ぶ問題であること、直ちに日常生活に影響が出る問題ではないこと、その原因が現在の社会システムやライフスタイルそのものにあることから、個々人が原因者だという意識を持ちにくいこと等、その性質によるところも大きいと考えられる。

しかしながら、一方では、地球環境問題の深刻さや重要性を国民に伝達するためにどのような施策が展開されてきたかについても反省すべき点は多いと思われる。

例えば、学校教育についてみれば、地球環境問題が人類の生存にかかわる極めて重要な問題であるにもかかわらず、理科や社会科の中の極めてごく一部のテーマとして触れられているにすぎず、地球環境問題全般に関する知識の伝達や、その原因が我々の生活そのものにあること等に関する教育や学習が展開されてこなかった。

また、いわゆる普及啓発活動についても、国、都道府県、市町村等において、キャンぺーンやシンポジウム、ポスター掲示等の手法を用いて展開されてきたところではあるが、例えば、テレビのゴールデンタイムにおける番組やCMの放映等、多くの国民に対し強い伝達力のある手法はほとんど用いられて来なかった。

 

 

 

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