第1に、金銭的なインセンテイブについては、まず、国税・地方税ともに、税の体系を地球環境を含めた環境に対する負荷量の観点から洗い直すことである。例えば、アイデアレベルの話ではあるが、当該商品の製造や流通の過程で生じた環境負荷の程度に応じ、段階区分を設け製造、販売、消費に係る税率を変更することや、固定資産税の算定方法の中に環境への負荷量を項目として盛り込むこと、また、三重県で検討されている産廃埋め立て税等、原因者負担の視点も取り込んだ法定外普通税や法定外目的税、あるいは新たな国税の創設や税の算定方式の変更等についても循環型社会を構築するために是非検討が進められるべきであると思料される。税については、当然に、政策誘導の手法としての妥当性や、公平性、徴収のあり方、経済活動も含めた国民生活への影響等、慎重に検討されるべき課題であり、軽々に論じられるべきものではないとは考えられるが、今後、少子高齢化社会を迎え国民負担率が上昇していくことは必至の状況にある中で、循環型社会を構築していく観点から、誰が、どのような基準で行政経費を負担していくのかという観点からも、原因者負担的な視点をさらに採り入れるべきではないであろうか。
また、次に、金融政策や土地利用政策についても、資金調達の観点から企業の一層の環境配慮を促進するため、環境配慮の程度に応じた格付けを行い資金調達コストを変えていく、環境に配慮した程度に応じて立地規制等の基準を変動させる等、資源循環型社会の構築を進める観点から、見直しを進めていく必要がある。
さらに、消費者に対しても、例えば、電力料金やガス料金、ガソリン料金等について、使用量に応じて段階的に単価が上昇していくシステムを導入する、ごみの有料化を進める等、その行動が環境に与える負荷に応じた経済的な負担を伴うような仕組みを導入することも検討されるべきであろう。
第2に、名誉等の第3者の評価的なインセンテイブとしては、企業等については、各企業等の行動が環境にどのような負荷を与えているかができるだけ公表されるような仕組みづくりが、その第一段階として必要となる。
この、公表のための仕組みづくりとしては、第1で述べたような経済的インセンテイブを取り込むことも1つの手法と考えられるが、公表しないという判断も含めて環境負荷の状況を公表する仕組みとすればよいと考えられる。
なお、この公表制度は、環境問題に対する関心が高まっている現状においては、企業の商品の販売にも影響することが多いと考えられ、第1の金銭的インセンテイブにもつながるものである。
また、表彰制度や認定制度の導入、活用についても検討すべき課題である。
さらに、例えば自動車でいえば、大型の自動車に乗ることが1つのステイタスシンボルとなっている現状にあるが、そうした大型車に乗り地球環境に負荷を与えるのことは「かっこわるい」、一方、地球環境への負荷の少ない軽自動車に乗ることは「かっこいい」といったように、できるだけ地球環境に負荷を与えないライフスタイルを流行としていくことも必要である。
第3に規制についてであるが、自動車のエンジンの改良やデイーゼル車の燃料である軽油の品質改善のように、技術開発や設備投資に莫大な費用がかかる場合や、あるいは、多少経費がかかっても、大型の、しかも、NOXの排出量が多い自動車に乗りたい者がいる場合等、現状の消費者ニーズや経済状況等からみて、第1の金銭的インセンテイブや第2の第3者評価的インセンテイブが十分に機能しない場合には、新たな規制措置の導入が必要不可欠であると考えられる。