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可能であれば、こうした施設は再配置したり、業務の見直し等で一箇所で住民が必要なサービスを全て受けられ、しかも自動車に依存しないでサービスが受けられる機会を多くしていくことが必要であろう。

しかし現状は都心の混雑解消あるいは新都心形成等を狙って、郊外あるいは都心周辺に庁舎等の施設を最近移転させた地方自治体も多く、施設の再配置等の対策は、言うは易し、行うは難しである場合が多い。地方自治体を対象にしたアンケート調査によれば、地方自治体の管理している住民が多く集まる施設を自動車に依存しないように工夫している地方自治体は少なく、また実施していたとしても公営バスによる施設への運行、路線バスが赤字の場合には運行補助の実施、施設附置の駐車場の有料化、ノーカーデーの実施、PR活動等の対策が挙げられている程度である。自動車で訪れるのが有利、あるいは自動車でしか訪れられない場所に地方自治体が施設を作っておいて、問題が生じたから地方自治体の方は特に対応は採らないが、必要がありどうしても施設を訪れなければならない住民は不便を凌ぎ、自動車は利用するなということではどうも釈然としない。施設を訪れる住民に不便を求めるのであれば、地方自治体はそれに見合う、あるいはそれ以上の努力が必要ではないかと考える。逆に言えば、これだけの努力を問題解決のために地方自治体自らがしているので、住民の方も考えて下さいという姿勢が地方自治体に必要ではないかということである。もしこうした考え方が認められるとすれば、例えば、施設へ公営バスの運行を行うのであれば、この公営バスを利用した方が自動車を利用するよりも高い交通サービスが得られる程度の公営バスの運行を工夫することが求められる。1日数便しか運行されず、申し訳程度に公営バスが運行されているのでは努力不足ということである。

しかし、こうした高い交通サービスを提供することは容易なことではない。そこで、次に考えられるのは、一方で自動車の利用については、言葉は必ずしも適切ではないが、不便に、そしてその一方で公共交通機関等の温室効果ガスの発生量の少ない交通手段を利用をしやすくするという2つの対策を組み合わせて、同時に1つの対策として実施するということである。例えば、ノーカーデーの実施と、その日のバス料金の無料化、あるいは施設に附置の駐車場の自動車の駐車料金の値上げと、デマンド方式の採用、あるいは情報通信装置を活用しての運行時間の提供等によるバス路線の高度化を同時に1つの対策として実施するということである。そして、こうした対策を何故実施してよいのか、何故この対策が適切なのか、この対策にどれだけの温室効果ガス発生量の抑制を期待できるのか、そして現にどれだけの住民の方々が協力して、どれだけの効果が発生しているのかを常に施設を訪れる住民の方に情報提供していくことが必要ではないだろうか。

 

(7)実施に向けて

これまで、地方自治体が行う事務・事業に関連して運輸部門で自ら実施すべきと考える対策を述べてきた。ここでは、こうした対策を実施していくうえでの課題である対策の実施体制、対策の選択、実施効果の計測の3点について意見を述べることにする。最初に実施体制について述べる。我が国での自動車保有率は、モータリゼーションが起こり始めた1960年代末頃では、人口密度の高い都市ほど自動車保有率が高いという関係を示していたが、モータリゼーションの期間中、人口密度の低い都市ほど自動車の保有率の伸びが高かったため、現在では人口密度の低い都市ほど自動車保有率が高いという当初とは逆の関係を示している。

 

 

 

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