地方自治体が民間企業を対象として民間企業が発生する交通行動に影響を与え、その交通行動をより温室効果ガスの発生量の少ない交通行動へ転換させるための対策は、これまで多くの対策が提案され、そして実施されてきた。しかし地方自治体自ら行う対策は、これまでのところ提案されたことはない。地方自治体の事務・事業に関連して交通行動を発生する民間企業だけを対象とし、差別的に何らかの対策、例えば地方自治体に財を搬入する民間企業だけのために共同輸送の基地を提供する対策を地方自治体が実施することは現代社会では許されないであろう。では、どのよう対策であれば可能なのであろうか。これまで述べてきたことではあるが整理すれば、次の条件を満たす対策ということになろう。
1]地方自治体が自らを対象として実施し
2]その結果として、特定の民間企業を差別的に取扱うことになることなく
3]地方自治体の事務・事業を補助するための民間企業の活動による交通行動の温室効果ガスの発生量を抑制できれば効果的である。
ここでは、この条件を満たす1つの対策として、次の提案を行う。それは、地方自治体が財やサービスの購入先を決定する場合、事務・事業の効率的実施のために委託先を決定する場合、いずれの場合でも原則的には行われる入札時に入札価格に加え、これらの活動に伴って発生する交通行動によって発生する温室効果ガス排出量及びこれを一定の期間のうち、例えば1年間にどの程度削減し、それをどのような手段で実現するのかを記載した計画書の提出を入札の条件とするという対策である。
温室効果ガス発生量の抑制方法は、輸送頻度の削減、燃費の良い車両の利用、運行方式の改善による輸送距離の削減、運転方法の改善による燃料消費量の削減、駐停車方法の改善による無駄な燃料消費量の削減、物流共同化による効率化等民間企業が取り組める全ての対策の中から個々の民間企業に合った対策を採用してよく、特にこの対策を用いなくてはいけないという条件はない。
以上のような、入札時に温室効果ガス発生量の抑制計画の提出を求めるという対策は、一度だけの物品等の購入の入札時には導入は難しいが、給食材料等の公立学校への配送、高齢者等への食事の配達サービス等、一定期間定期的に発生する交通行動を伴う場合の入札時への導入は検討に値する対策と考える。こうした対策が実施できれば、温室効果ガス発生量の抑制を一層進めるために、地方自治体管理の建物等に、民間企業の物流効率化をさらに推進するために荷役スペースや駐車スペースを適切な位置に確保したり、必要に応じてこれらのスペースの利用予約を行うための情報システムを整備する等の対策も有効な対策として地方自治体が実施できるようになろう。
(6)質の高い情報の提供 −5番目の交通行動への対策−
都市の土地利用という観点から言えば、本来多くの人が集まる施設は、自動車に比べ、輸送力の大きい公共公通機関との関係を充分考慮し配置し、自動車だけに依存しないようにすることが必要である。県庁、市役所、病院等の地方自治体の管理する施設の多くは公共交通機関の利用可能な場所に立地させるべき種類の施設であるにもかかわらず、現状では、こうした配慮は必ずしも充分とは言えない場所に立地していることも多い。