個々の事業については、相応に国の補助が得られるものもあるが、後年度の維持費にせよ、一時的な経費にせよ、経費の増に関わるものについては、厳しい財政状況のなかでは極端に避けられるのが現状である。
以下にいくつかの事例を示すが、自治体における財政的負担が大きいという点が地球温暖化施策を進めていくうえで深刻な問題である。
1]ダイオキシン対策
廃棄物焼却施設から発生するダイオキシン類を削減するため、廃棄物焼却施設の排ガス処理設備の基準の強化等の構造、維持管理の基準を強化すべく、平成9年12月に廃棄物処理法施行令の改正が行われた。
本市では、本改正に伴う平成14年12月の新基準値にいち早く対応するため、平成10年から5カ年で200億円かけて施設整備を行っているところである。これは法規制という現実的問題に対処する事項として、また厚生省の補助金も背景にあったため実施できたものであるが、完全な施設整備後の維持経費については自治体が負担していくこととなり、活性炭等の薬品等も含め年間数億円の維持管理費が必要となり将来の負担が今から懸念される。
2]太陽光発電等の導入
太陽光発電等の導入、特に公共施設への導入については、本市でも推進しているものの新規性のあるトピック的な事例としての色が濃く、各種の温暖化対策の指針に沿った導入にはなり得ていない。
本市では平成14年度の開設を目途に環境学習の拠点としてのエコロジーセンターの整備計画があり、現在、実施設計、基本設計の段階に移っているところであるが、この中でも太陽光発電の導入があげられている。太陽光発電に係る特殊工事費がおよそ6,000〜7,000万円、これにより得られる年間の総節減効果は約22万円であり、単純計算すると、償却するには300年程度かかることになり、これではとても費用対効果を主張することはできない。
3]低公害バスの導入
本市交通局では、低公害バスの導入を推進している。しかしながら低公害バスは通常のもの(2,000万円前後)より800万円程度の経費が余計に必要であり、国の各種の補助制度に加え市長部局からの補助を得てしても年間数台程度導入しているにすぎず、積極的な導入に至っていない。
以上のような施策には継続的に実施することで、長期的な視点でとらえれば経費節減といった行政の効率化につながるものもあるものの、長期的な観点での評価に達する以前の現実的な判断で終わってしまうという点が最大の課題である。
今後、費用対効果を「地球環境保全」という視点で示していく等、「環境問題」の重要性や必然性を一層強く訴えていくことが重要となってくる。