第1章 地球温暖化防止に向けての今後のあり方
調査研究委員会 委員長
猿田勝美
1 基本方針
我が国では、1990年10月に地球環境保全に関する閣僚会議において、「地球温暖化防止行動計画」を決定し、国においてはこの行動計画に基づいて各種の地球温暖化対策が推進されてきたが、1992年5月には「気候変動に関する国際連合枠組条約」が採択され、1994年3月に発効した。
この条約では、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極的な目的とし、生態系の保全や経済開発が持続可能な態様で進行することができるように期間内に達成されるべきであるとしている。
この目標を明確にするため、1997年(平成9年)12月に第3回締約国会議(COP3)が京都で開催された。この京都会議において、長期的・継続的な排出削減の第一歩として、先進国の温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、HFC、PFC、SF6)の排出量について法的拘束力を持つ数値目標を盛り込んだ「京都議定書」が採択された。
先進国全体で温室効果ガスの総排出量を5%以上削減することを、我が国は「2008年から2012年の約束期間に1990年レベル(HFC、PFC、SF6については1995年を基準年とすることができる)から6%削減」するとの目標が定められた。アメリカ7%、EU8%など先進国の具体的な目標が設定され、長期的な取組が求められる地球温暖化防止に向けて第一歩を踏みだしたが、京都議定書の発効の条件整備として、「京都メカニズム」等の国際的なルールの確立等が必要である。現在、締約国会議(COP6)における合意に向けて作業が進められている。
1998年(平成10年6月)に、京都議定書の採択を受けて、国民各階各層の参加や協力が得られるような取組の強化を図るとともに、あらゆる政策手段を動員して、着実に削減が達成されるよう総合的な施策を計画的に推進するための「地球温暖化対策推進大綱」が地球温暖化対策推進本部で決定された。
また、中央環境審議会は、平成9年12月に「今後の地球温暖化防止対策の在り方について」の諮問を受け、慎重に審議を行った結果、平成10年3月に「京都議定書に則って、地球温暖化防止対策を世界的に進めていくことに人類の運命がかかっていること、我が国がこの世界的取組の推進役となるべき立場にあることに鑑み、政府におかれては、この答申を踏まえ、早急に法律の整備のための具体的な検討を行うこと」を答申した。
政府はこれを受けて、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年10月)を制定・公布した。この法律は今日の段階からの取組とした、国、地方公共団体、事業者、国民それぞれのの責務を明らかにするとともに、各主体の取組を促進する枠組みを示している。
「地球温暖化対策推進法」第7条第1項の規定に基づいて、「地球温暖化対策に関する基本方針」が平成11年4月9日に閣議決定された。その基本方針の策定の背景と意義について、概要を記すると次のように示されている。
地球温暖化問題とは、人の活動に伴って発生する温室効果ガスが大気中の温室効果ガスの濃度を増加させることにより、地球全体として、地表及び大気の温度が追加的に上昇し、自然の生態系及び人類に悪影響を及ぼすものであり、その予想される影響の大きさや深刻さから見て、まさに人類の生存基盤に関わる最も重要な環境問題の1つである。