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「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告によれば、主な要因に不確実性はあるが、様々な証拠を考慮すると地球の気候に対する検出可能な人間の影響があることが示唆されている。また、大気中の温室効果ガス濃度、その気候影響等に関する中位の予測によれば、2100年には約2℃の平均気温の上昇、約50cmの海面水位の上昇などの影響が予測され、植生、水資源、食糧生産、洪水・高潮、健康影響の分野で大きな影響が出てくるものとされている。

地球環境問題、とりわけ、地球温暖化問題は、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動や生活様式の見直しを迫るものであり、その意味で京都議定書の採択は転換点となるものである。温室効果ガスの排出量は、石油危機後の石油価格高騰期を除き増加基調にあり、また、多くの先進国で温室効果ガスの削減目標を設定し、取組が始まった1990年以降においても、一部の国を除き、その排出量は増加している。ちなみに、1996年度の我が国の二酸化炭素の排出量は、1990年度比で9.8%の増加となっている。エネルギー需要側からみた場合、部門別には、二酸化炭素排出量全体の約4割を占める産業部門の排出量は微増で推移している。一方、運輸部門及び民生部門の排出量の伸びが著しい。エネルギー効率が既に世界最高水準にある我が国にとっては、温室効果ガスの総排出量の削減を図ることは容易な課題ではないが、人類の将来のため、そして、地球温暖化問題の解決に向け、一貫して増加基調にある温室効果ガスの排出量をまず減少基調に転換させ、その上で京都議定書の目標の達成、更なる長期的・継続的な排出削減を図っていかなければならない。

我が国社会経済が引き続き活力を維持しつつ、地球温暖化対策を自らの活動に組み込んでいくことが必要である。その際、地球温暖化対策を講ずる上で、対症療法的な対策だけでは不十分であり、都市・地域構造、交通・物流体系、エネルギー供給構造、生産構造からライフスタイルまで広範な社会経済システムを、二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量の削減等が図られるように転換していかなければならない。これは、社会を構成するすべての主体が取り組むことによって初めて実現される。その手法は、規制的なもの、市場メカニズムを活用するもの、国民のライフスタイルの変更につながる社会的な仕組みや社会資本を整備するもの、環境教育や情報開示の中で自らが努力するもの等多様であると、策定の背景と意義について示されている。

基本方針は、地球温暖化対策の基本的な道筋を明らかにし、国、地方公共団体、事業者、国民の各主体の措置に関する基本的事項を定めたものである。

この基本的事項の中で、地方公共団体が講ずべき温室効果ガスの排出の抑制等のための措置に関する事項としては、次のように示されている。

温室効果ガスの排出の抑制等の施策としては、地域の自然的・社会的条件に応じて、とるべき施策を判断し、きめ細かい地球温暖化対策を講ずる。

例えば、1]地域づくりの推進者として、地球温暖化対策に資する都市整備の推進、木材資源の有効利用等の推進を図るとともに、植林、里山林の整備、国土緑化運動の推進等の森林の保全や都市緑化等による二酸化炭素吸収源の保全・強化に資する施策の実施。2]事業者や住民に、地球温暖化対策やエネルギーに関する環境教育・環境学習、民間団体の活動に対する支援等を行う。また、地球温暖化防止活動推進センターや地球温暖化防止活動推進員の活用など。

 

 

 

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