高齢化の進んでいる自治体ほど、高齢者1人当たりのショートステイ対象者が少ないことを意味しており、これもやはり予想に反するものである。なぜなら、基本的に高齢化比率の高い地域ほど、高齢者ケア・サービスの目標値も高く設定される算定構造になっているはずだからである。こうした結果がでた理由についてもさらなる検討が必要である。
その他の要因では、人口密度(DENS)のみ10%水準であるが、マイナスで有意に表れている。人口密度の低い自治体ほど、高齢者1人当たりのショートステイ対象者が多いという関係を示唆している。これは、表3の結果と同様に、ショートステイを引き受ける特別養護老人ホーム等の施設が、一般的に市街地・中心部で不足し、郊外・地方ほど充実している実態を反映している可能性がある。
カ 表6の推定結果
最後に、老人訪問看護対象者総人数(高齢者1人当たりの値、RVISIT)に関する推定結果をみてみよう。決定係数は0.17程度であり、それほど高くはないが、各説明変数の効果はほぼ前述したショートステイ対象人数(RSTAY)に関するものと同じである。つまり、ニーズ要因で言えば、寝たきり老人比率(ROLD2)と在宅虚弱老人比率(ROLD4)がプラス、要介護痴呆性老人比率(ROLD3)がマイナスでそれぞれ有意に表れている(ただし、有意性自体はいずれもRSTAYに関する推定結果と比較して低い)。また人口密度(DENS)も、同様にマイナスで有意に表れている。
ここで意外な結果であったのは、訪問看護サービスの算定においては寝たきり老人数しか考慮されていないにも拘わらず、在宅虚弱老人(プラス)と要介護痴呆性老人(マイナス)が有意に効いてきた点である。こうした結果が出た理由についても、やはり今後の検討課題である。
キ 全体を通じて
以上、4つのケースの推定結果をそれぞれ概観してきたが、全体を通じて観察された興味深い結果をいくつかまとめておこう。
まずニーズ要因についてであるが、第1に、ここでの4ケースの中では、最初の特別養護老人ホーム・老人保健施設のベッド数(RBED)を対象にした表3のケースのみが、言わば施設ケアを代表した試算であった。そして、このケースにおいてのみ、施設入所見込み者数(ROLD1)に有意にプラスの値が得られたことは、予想された結果とはいえ、施設ケアと在宅ケアのサービス目標値の決定構造にはっきりとした違いが見い出されたという点で注目に値しよう。