3 基本モデル:自治体の高齢者ケア・サービス水準の決定モデル
本論では、自治体の高齢者ケア・サービスの目標水準を、その地域のニーズ要因、都市規模要因、財政力要因、地域特性要因の4つの要因によって説明(回帰分析)することを意図する。回帰モデルを式で表せば以下のようになる。
各自治体の高齢者ケア・サービスの目標水準(被説明変数)には、施設ケアおよび在宅ケアのサービスの中から、入手可能なデータという制約のもとで、以下の4つの変数を取り上げることにする。
1]特別養護老人ホームおよび老人保健施設のベッド数
2]ホームヘルプサービスの対象総人数
3]ショートステイの対象総人数
4]老人訪問介護の対象総人数
これらのデータについては、栃本『介護保険』(1997)の中に全国自治体の「老人保健福祉計画」の一部主要データが整理・掲載されており、そこから引用する。1]が施設ケアの水準を示す代理変数、2]〜4]が在宅ケアおよびそれを支援するサービスの水準を表すものである。ホームヘルプサービス、ショートステイと並んで在宅ケア3本柱の1つにあげられるデイサービスについては、上述した図書に掲載されていないため、残念ながらここでは分析対象に入れていない。また回帰分析を行う際には、1]〜4]の変数をその自治体の高齢者人口で割ることで、比較可能なスケール、すなわち高齢者1人当たりの値に基準化して用いる(4)。
次に、説明変数として考慮する4つの要因について説明を加えていこう。それぞれの要因を表す具体的な変数は表2にまとめてある。まず第1に、ニーズ要因については、「老人保健福祉計画」の中で、各自治体が介護サービスの目標値を決める際に算定根拠に用いている3つのカテゴリー(寝たきり老人、要介護痴呆性老人、在宅虚弱性老人)の要介護者数と高齢者人口比率のそれぞれ予測値を充てる(5)。したがって、これらニーズ要因は、制度上(算定構造上)高齢者ケア・サービスの目標値1]〜4]とプラスの相関をもつことが期待される。具体的に言えば、1]は各自治体の高齢者人口の一定比率として、各県ごとに目標水準が決められている。2]と3]は上記3カテゴリーの老人数をウエイト付けして、4]は寝たきり老人数のみを、それぞれ算定の根拠にしている。