第2に、都市規模要因としては、人口、面積、人口密度の3つの変数を考慮する。その自治体の人口や面積が高齢者ケア・サービス水準とどのように関連しているかは一概に予想できないが、何らかのファクト・ファインディングが得られる可能性をここでは期待している。人口密度については、高齢者ケア・サービスが多数の対象者に集合的に供給可能であるとすれば、マイナスの効果が現れると予想している。また人口密度は、都市化の程度を代理する変数として機能するかもしれない。
第3に、自治体の財政力を表す変数としては、住民1人当たりの地方税収をとる。財政力のある自治体ほど、厚生省が示したガイドラインを超えてサービスの充実を図ることが可能であるとすれば、この変数はプラスに効いてくるはずである(6)。
最後に、地域特性要因としては、表2に示すように4つの変数を考慮してみる。まず一世帯当たりの家族数であるが、これは、家族数が減るほど在宅ケアや施設ケアによる介護サービスヘの需要が増加し、それを自治体が斟酌しているとすれば、マイナスの値を示す可能性がある。次に、第1次および第3次産業の就業人口比率を含めたが、これは農村部か都市部か、あるいはサービス化の程度が、介護施策と何らかの関連性をもっている可能性を単純にみてみようという理由から考慮してみた(7)。最後に、1人当たり小売業商店年間販売額を、都市化・サービス化の代理変数として考慮してみた。以上あげた変数が高齢者ケア・サービス水準と関連をもつかどうかは一概に分からないが、サービス水準に微妙な自治体間格差をもたらしている地域的要因が存在するとして、それをコントロールする代理変数として機能することを期待している。
かくして、次節では、以上説明してきた実証モデルと各種変数を用いて、自治体の高齢者ケア・サービスに関する実証分析を行ってみる。