現実には、介護保険、教育、医療とサービス給付で行われている。そうであれば、供給側は当然のことながら地方政府であり、所得再分配機能の地方政府への移行と見ることができる。これは、累進課税という所得税を中央政府に残しておく根拠は少ないのではという議論である。
(イ) グローバルな意味でも、地域間の意味でも、いわゆる、財、人、その他の移動性が非常に大きくなってきていることを踏まえて議論すべき
イ ミニッツ、ウィルソンの新たな税源配分論
以上2つを踏まえて、ミニッツ、ウィルソンは以下の主張をしている。
(ア) 個人所得税は、中央政府だけでなく地方政府にも与えられる
→ 所得税は中央という議論が崩れているので、地方政府におろす。その比率は5:5ぐらいでいいのではないか
(イ) 法人税は中央政府が主たる権限を握るが、地方政府にも何らかの形の法人税を配置すべき
(ウ) 地方政府に付加価値税ないしは小売売上税を配分
→ 所得再分配機能が地方に下り、かつ配分機能が地方政府であるので、応益説的なものを税源として割り当てる
このような考え方に立てば、ほとんどの租税は中央から地方へ移行してくる。
(6) 地方税の課税形態
地方分権の時代に対応した税源移譲を考えるとき、必ずしも単純な独立税での地方への税源移譲が推奨されるわけではない。課税形態としての独立税主義というものは、所得税、法人税、間接税(付加価値税、小売売上税的なもの)、限られた基幹税を一つの政府に税目ごとに分けることが実際上困難であることを踏まえれば、実際には採り得ないものである。
さらに、前述したような租税の外部性を考えたとき、ある税目をそのまま地方税に配分することは難しい。したがって、課税形態自体まず独立性を放棄すべきという考え方になるのである。
図4-6は、課税形態を示したものである。従来議論の中心にあったのは、分離方式のうち独立方式という唯一の方式であるが、その他、分離方式の重複方式、税収分配方式の共同方式、移譲方式など、色々な課税形態が考えられてきている。