イ 第2段階
第1段階のような非効率性が発生することは確かであるが、では分権下において他の地方政府が黙っているかというと決してそうではない。
例えば、ニューヨーク市でクリスマス時の需要の喚起のためにセールス・タックスを下げて、隣の市から消費をニューヨーク市に移そうとした場合(これを通常、租税競争という)、当然のことながら、隣の市も同じように税率を下げて税収を増やそうとする状況が生まれることになる。
ウ 第3段階
ニューヨーク市が税率を下げることによって、消費行動に対する非効率が発生するが、隣の市も税率を下げることによって、結局、お客は元に戻ってしまうという、いわゆるゲーム論といわれる状況になり、結果、地方政府がお互いに打ち合って、単に税率が下がるだけで消費行動は中立的になるという、結果として、実は非効率になるという議論である。
このように、経済学では、地方分権下における租税というものは決して好ましいものではない、自主的に決定することは好ましいとは言えない、むしろ分権下ではやるべきではないという考え方も存在する。
(5) 新たな税源配分論
ア 伝統的な機能配分論による税源配分の問題点及び主張
以上のような議論から、ダービー、ウィルソン、ボードウェイ、ミニッツ等、いろいろな学者が「租税の外部性」という概念を基礎にして、オーツとかマスグレーブ流の機能配分論による税源配分論に対して幾つかの問題点を指摘し、本当にその議論でいけるのかということを提唱し始めた。それが次の2つであり、税源配分論の根幹が変わってきていることを主張している。
(ア) 私的部門と公的部門及び所得再分配機能の枠組みを議論し、税源配分論を検討すべき
所得税を国税とする根拠である所得再分配機能の実態を見ると、累進所得税によって歳入側に徴収されるが、貨幣による歳出としての所得再分配は行われていない。