したがって、所得再分配機能を担うべき租税である所得税、相続税、法人税は中央政府の租税とすべき、という論理づけができる。これに対して、固定資産税、賃金税(ペイロール・タックス)等々は配分機能の役割を担うものであるから、これら固定資産税、賃金税、受益者負担等々は最も下層の地方政府に与えるべきということになる。また、中立性を確保する観点から、移動可能性が低い税源は地方政府に、移動可能性が高い税源は中央政府にということも言える。そういう意味で、固定資産税は、応益説的な話と効率性との関連において市町村税として主たる税目となっている。
これらの理屈に立って、個々の独立税について機能的な議論をすれば、中央政府に税収が上がってくることになる。このため、中央政府が税収を集めて、政府間移転で地方政府に下げて配分機能を機能させるシステムが、一番大きな枠組みとして浮かび上がってくるのである。
(4) 租税の外部性
最近、経済学でよく言われる考え方に「租税の外部性」ということがある。これには3段階の議論がある。
ア 第1段階
米国フロリダではホテル税を課税しているが、これを可能にしているのが、フロリダの冬のリゾート地のホテルが、他の地域と比べて比較優位にあり(経済学でいう需要の価格弾力性が小さい)、課税をしてもお客が逃げないからである。さらに、課税をすることによって、例えばニューヨークの人に租税負担を転嫁することができる。
これは、通常、地方税では「租税輸出」と呼ばれる現象であり、ボーダーを超えての消費に対する消費税の形となり、中立性の概念からいうと、前述の伝統的な考え方の中では、租税が人々の経済行動に影響を与えるため、それは好ましくないという議論になる。