3 新たな時代の地方税財源のあり方について
(1) はじめに
地方財政の基盤強化を行うためには、税源移譲が不可避である。国から地方への税源移譲の正当性を経済学的に理屈づけようとした場合に、その基本的考え方を基礎的な理論から積み上げて、実際にどのような移譲が可能かを以下に考えることとする。
(2) 伝統的税源配分論
「伝統的税源配分論」とは、安定性、伸長性、応益性、負担分任性、普遍性など、地方税原則論で言われるものに当てはまる税は地方税とすべきということである。また、これまで議論の中心は独立方式であった。おそらくシャウプ勧告以来、地方の税源は独立税であるべきということを基本にしていると思われる。
この原則論の考え方に立てば、例えば、直接税に関しては、人税は国税に、物税は地方税に、という原則や、応能性のある租税は国税に、応益性のある租税は地方税に、という議論になる。また、間接税では、製造段階に近いか、消費段階に近いかで税源配分を行い、前者は課税客体の地域偏在を理由として国税とし、後者を地方税とするが、その考え方の基は伝統的な原則論である。固定資産税についても、基本的な考え方として、応益性、普遍性、安定性等ということから地方税とされている。
(3) 機能配分的機能配分論
しばらく時代が過ぎると、税源配分について、政府の機能配分論から説き起こす近代経済学的な考え方をもつマスグレーブの税源配分論が出てくる。
マスグレーブの税源配分論の特徴は、中央政府、地方政府が、それぞれこの機能を担うべきという議論を立てて、それに基づき、税源配分において、その機能をどの租税が賄えるかという問題設定をすることにある。
具体的に、マスグレーブの財政の3機能(図4-5参照)といわれる「配分機能」、「所得再分配機能」、「経済安定化機能」を、配分機能は地方政府に、所得再分配と経済安定化機能は中央政府にというように一つの論理を作って、次に租税理論に議論を持っていくものである。