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イ 代替案や判断形成の材料を総ての人にとってアクセス可能にする。

・ 対抗勢力や第三者勢力も政策案をつくり出すことが可能となり、完成度の高い案同士の良質な議論が可能となる。

 

ウ 議論の公開性を担保する。

・ 議論の前段階には、相当少人数のしなやかな議論が不可欠であるが、それらには密室性の批判がつきまとう。

・ 話し合われた議論の内容、経過を総て公開することにより、密室性という非難から免れる。

 

以上の基本的考え方については、本調査研究の委員長である深谷昌弘教授が策定に関わった「川崎市財政問題検討委員会最終報告書〜行政再編への行動計画〜」において、その理念が強く打ち出されているので、本報告書の策定過程や内容・記述を見ることで、その考え方を具体的に検討してみることとする。

 

(2) 情報公開の意義(「川崎市財政問題検討委員会最終報告書」を例にして)

本報告書の策定に当たって、財政支出削減を中心に取り上げて目標値を掲げただけでは、辻褄合わせや、本来削るべきでない部分を削りやすいという理由のみで削るように、本当の意味での行政体の改革を、かえって歪めてしまうおそれがあると考えた。そのため、本報告書を「行政再編への行動計画」と位置づけ、改革目標として「住みがいのある地域社会・川崎市づくり」を掲げ、「川崎市」という住民共有の公共財の価値を高めることを最終的な目標としている。

そして、行動目標は、

・行政体を働きがいのある事業体、公共価値創出の事業体へと再編成する

・市民・行政の公共的な協動関係を形成する

とした。

具体的には、行革によくある後ろ向きの元気の出ない議論ではなく、前向きに希望のある目標を掲げ、公共価値を創り出すことに働きがいを感じる人たちからなる市役所に向けた議論を行う。そこで、公共価値は、皆が共有する価値として認められるものでなければならず、市民、行政の公共的な協動関係があって初めて実行できることを再確認するものである。そして、これらの目標を実現する上での民主的制度基盤を「情報公開」に求め、以下の3段階に分けた戦略をうたっている。

 

 

 

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