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ア 長期計画との関連性

政策評価を導入するに当たっては、その地方公共団体としてのビジョンを明確にした長期計画の果たす役割が非常に重要である。地方公共団体が長期計画を策定するときに、目指すべき姿に向けた政策・施策の体系が整理されていれば、個別事務事業の位置づけも明確なものとなり、評価も有意義なものとなる。

ともすれば、詳細な事務事業に係る目標設定に重きが置かれると、そもそも当該事業を行うべきか否かという政策の優先順位をつける議論が行われにくくなる。この議論は、本来、地方公共団体の長期計画を策定するときに不可欠なものである。

また、評価が行政組織内部の効率性向上を目的に導入される場合、外部の住民の選好と合致しない目標設定が行われるおそれもある。この点での乖離が目立つようであれば、行政内部の自己評価方式の限界であり、政策評価が単なる説明責任の口実となってしまう。つまり、行政に有利な目標設定が自由にできるようであれば、政策評価が住民に対する言い訳として用いられてしまう。

このため、政策評価の目標設定を市民の選好に合致させることを担保するためには、地方公共団体の価値体系を明確化した長期計画が不可欠である。これが市民に対する行政の契約となり、市民に対する約束として、評価の議論の出発点となるものである。

もっとも、長期計画が総花的では、事務事業を体系づけても優先順位を認めることにはならない。しかし、近年の厳しい財政状況は、政策評価の価値基準として長期計画の政策体系の見直し(優先順位付け)をせまることとなった。これにより、新たな長期計画の策定・見直しが、一方で導入が進む政策評価の価値体系作りの土台として役立つものとなることが期待される。

 

イ コスト意識の徹底

事務事業の評価を行う際には、当該事務事業に係るコストを、より厳密に把握しなければならない。

例えば、ある箱物の建設に関して、完成後の運営費として施設で働く人件費を事務事業のコストに含めるべきであるし、当該施設建設に係る地方債の利払いもコストに含める必要がある。

国をはじめとする公的セクターでは、会計年度独立の原則の影響もあるため、とかく単年度限りの経費だけで議論を行う傾向があるが、コスト意識を徹底させて、厳密な算定を行い、適正な金額に基づく評価を行う必要がある。

 

 

 

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