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6]新造船建造量減少の背景

最近の新造船建造量の減少として次の点が指摘されている。即ち、

1)海運物流量の減少

(荷主業界の物流合理化、スワップ取引拡大、業界再編等による)

2)運賃の低下

(荷主企業の物流費削減の動き、輸入品圧力等による)

3)資金調達難

(営業権の廃止による担保価値喪失)

4)バブル経済期の過剰建造の反動

5)リプレイス期間の延長

6)制度変更による混乱

これらの要因は構造的であり、多くが先行き不透明なものとなっている。

 

・運賃下落による船主経営の疲弊、先行き不透明感による。現在の運賃水準では、新造船建造は採算が合わない。代船期間は近年、やや伸びている。(A社:一般貨物船)

・バブル期に新造船を建造しすぎた上に、海運需要が減少したことが背景。(C社:油送船)

・今の海運運賃水準では新造船を建造しても採算が取れない。(F社:油送船)

・建造量減少の背景は、1)採算が確保できない、2)用船社の保証が確保できない、3)バブル期の造り過ぎの反動、4)権利(営業権)の喪失、5)建造資金調達の困難性(G社:特殊タンク船、セメント船、油送船)

・従来は、船主は手持ち資金が無くても権利金で新造船を建造できたが、現在ではそうした循環の輪が切れてしまった(H社:各種船種)

・リプレイス期間が長期化している。現在の運賃では全く採算ベースに乗らない。新船を建造しようとしてもオペレータが承認しない。(I社:油送船)

・不況、物流業界の合理化、バブル時の過剰建造により建造量が減少。船主も建造を認めない。(K社:油送船、コンテナ船)

・最大の原因は、スクラップ・アンド・ビルドから暫定措置への移行である。暫定措置制度の将来が見えないため、海運事業者は「冬眠」してしまったのである。そのために新造船建造量が激減した。(M社:一般貨物船)

 

7]新造船の将来展望

新造船需要が回復するまで今後3-5年の時間が必要であるとの見方が多い。需要回復のための条件は、1]物流量の回復、2]運賃水準の回復である。しかしながら、需要が回復しても従来水準までは回復しないという見方では一致している。

 

 

 

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