密度流拡散装置による成層液体の攪拌・混合
ナカシマプロペラ株式会社
1. はじめに
海洋、湖沼等の地球上にある水圏は、太陽光や大気温度等の影響を受けて表層から底層にかけて水温が変化しており、海洋では更に塩分も変化しているため、密度により成層している場合が多い。この密度成層した液体において、ある密度の液体が入り込んだ場合、同じ密度の層へ入り込み重力により水平に遠方まで拡散する性質を持っており、これを密度流という。
海洋の浄化等を目的にこの密度流拡散現象を利用して、成層海域の表層及び底層水を特殊なポンプにより吸引混合し、中層へ吹き出し、密度流として拡散させる新しい概念の省エネ型の成層液体攪拌装置を開発し、その実証機を現在運転中である。
本調査研究では、この特殊なポンプ(上下吸込み水平全方向吹き出し)を持つ本攪拌装置について、これまでに実例の無い3次元での密度流拡散をコンピューターによりシミュレーション計算し実験との比較・検討を行う。さらに条件の異なる海洋環境等でもその省エネ効果、広域攪拌が十分発揮できるように、実用的な密度流拡散のシミュレーション計算方法の開発を行う。
2. シミュレーションの開発
2.1 シミュレーションの概要
密度流拡散現象をコンピュータでシミュレーション計算する。本開発では汎用熱流体ソフトSTAR-CDを用い、実用的な密度流拡散シミュレーションの開発を行った。本ソフトは、基礎式に質量および運動量の保存方程式、直行座標系ナヴィエ・ストークス方程式を用いており、流体の粘性を考慮され、また分子拡散現象も考慮されている。
解析モデルを作成し、密度成層、点吹き出し、重力場および拡散係数の条件設定の方法を開発し、密度流拡散シミュレーションを行った。
ここでのシミュレーションは、模型実験と同じ条件で行うべく解析モデルを作成した。解析モデルは水槽を円筒座標系で表現し円筒の5゜分の範囲で行った。メッシュ数は約1万5千であり、600秒後(1イタレーション時間は0.05秒)のシミュレーションに要したコンピューターの稼動時間は約10日間であった。以下に結果を示す。
2.2 シミュレーション結果
1]装置周りの流速分布および密度分布
図5、6にそれぞれ装置稼動240秒後、600秒後の装置周りの流速分布を示す。密度流が広域に発生していることが分かる。流れは装置周りで上下に揺らいでおり、離れるにしたがい一定深さに収束している。
図7、8にそれぞれ装置稼動240秒後、600秒後の密度分布を示す。時間が経過するにしたがい密度分布の幅が大きくなり密度成層が破壊されている。