・自然衰耗、設計不良、腐食の上位3項目の合計で全体の82.7%を占める。
・このうち、設計不良が33.3%にも達することは、設計としては深刻に受止めるべし。
・メンテナンス不良によるものは26.9%で、そのうち、半数以上がメンテナンスを考えていない設計によるもの。
・これ等のものは造船所の設計によるより、メーカーによるものが多いと思われるが、造船所の設計もメーカーを指導することを怠ってはいけないことを示している。
(2)発生部位別故障頻度の割合;
発生部位別の分析結果では、ブレーキライニング/ベァリング等の衰耗が47%、シーブ類/ベァリング等の可動部分が約21%を占めている。
(3)装置別故障頻度の割合;
舷梯/揚錨機/係船機/通風装置を除いて、いずれの装置も可動部分及び衰耗部分で大半を占めている。
ハ)耐用年数決定要因;
耐用年数決定の要因として各装置に共通した下記の要因がかんがえられた。
(1)可動部分の摩耗 (3)疲労
(2)衰耗(軸受と潤滑) (4)腐食
これ等の詳細は省略して一読を勧めるが、筆者の感想としては折角の所産を実現する手段をもう一踏ん張りして提案すべきであったと思うが、当時は現在のように大きなシステムを考える雰囲気ではなかったので、やむを得なかったと思う。
6. 安全性確保のための新しい研究;
数年前から、安全性に対する新しいアプローチが開始されだした。それはFSAであり、「経年劣化に伴う機関性能のライフサイクルの研究」(平成9、10年)(SR235)であるが、これ等については既に触れたので、その他の新しいアプローチについて述べる。
6.1. 「船舶の高度モニタリングの基礎研究」(SR233);
この研究は平成7年度検討・審議され、平成8〜10年度に実施されたものである。その目的は「船舶が航行中にどのような状態にあり、どのような履歴を有しているかを適確に把握し」、「船体状態を遭遇波浪/推進性能/構造応答に亘って総合的に把握する高度なモニタリングの骨格とその技術要素を提供する」ことである。そのため、
・波浪中の船体状態を波浪/性能/構造応答について総合的にモニターする。
・船上パソコンにより、密なモニター頻度でデータ収録と自動解析を行う。
・船上及び陸上のコントロールセンターで同時にモニター可能にする。
・保管・解析されたモニターデータを運航計画/荒天時航海支援/保守支援に反映させる。
等の機能を持たせる。この全体のイメージを図5.に示した。また、この研究の一環と見做される新聞記事も紹介しておく。
目下の所、このシステムはシステム化し易い推進/運動/構造の応答に限られているが、小規模でシステム化し難い艤装に対するモニタリングも大切である。海陸一体の大規模なものでなく、船上だけの個別のものになろう。手初めに火災と漏油をコアにした管系のモニタリングシステム等から始めたらどうだろうか。