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5. 艤装品の経年変化;

 

艤装品の故障による海難が直接的に統計に表れることは少ない。海難種類別の統計では「その他」の項目(隻数率では12〜14%)に含まれるからであろう。しかしながら経済的な視点からはこの経年変化は大きな項目になる。配管系とその他に別けて述べる。

 

5.1. 配管系;

 

配管系は陸上施設にもあり、世界的にどのようなアプローチが行われているかを述べ、タンカー等に対する留意を付加する。

原子力発電所、或いは火力発電所で配管系のトラブルが多数報告されている。最近は特に多い。

米国では、全ての原子力プラントに関し、配管減肉の調査を実施し、ASMEでは侵食(Errosion)腐蝕(Corrosion)作用による配管減肉をモニタする規則を作成しつつあり、多分1989年中に発行されるだろうと報告されている。また最近では、侵食、腐蝕作用による配管減肉のシミュレーションプログラムも作成され、原子力発電所や火力発電所で活用されていると報告されている。少しでも侵食や腐蝕の問題を手掛けた人は、この複雑な事象をシミュレーション処理することに疑問を持つであろう。しかし米、英、佛、西独ともにこのようなアプローチをしているという。勿論厖大なサンプルの解析に基づくものであることは間違いないが、原子力プラントの安全性を確保するためには万難を克服して実施しなければなるまい。シミュレーションプログムの詳細はわからないが、発電処配管が対象であるから内部流体を主として、侵食、腐蝕作用に大きな影響を持つパラメータとして流速、PHレベル、酸素濃度、温度、幾何学形状(乱流発生箇所)、金属材料を挙げ、次に配管減肉が問題になったパイプ系統に対し、影響について重みづけを行う。概括的には、

減肉速度εは

ε=F1(T)・F2(AC)・P3(MT)・F4(O2)・F5(PH)・F6(G)

ここに、

F1(T)=温度効果のパラメータ

F2(AC)=合金成分(クロム、銅、モリブデン)の影響を表すパラメータ

P3(MT)=質量効果のパラメータ(流量、配管径)

F4(O2)=酸素濃度効果のパラメータ

F5(PH)=ぺーハー効果のパラメータ

F6(G)=配管系幾何形状効果のパラメータ

といった形をとることになろう。設計情報を入力すれば期待出力が得られるが、実機配管の検査記録によってこれを修正すればより正碓な結論が得られよう。

シミュレーションプログラムの内容がどうあれ、その目的とするところは

1)どの配管がどのくらいの頻度で検査されるべきか?

2)どんな非破壊検査手法及び技術が使われるべきか?

3)配管要素が便用可能かどうか、どの様にして判定されるのか?

であり、2で述べた構造の信頼性確保と全く同じである。

タンカーの場合は、内部流体の問題は間歇的であるが外部腐蝕問題の方がより深刻であると言った問題がある。問題の重点はその環境によって変わるが殆どの項目は経年変化の要因を含んでいる。

図3.に示されているように船舶の火災の50%は機関室出火、機関室火災原因の60%は漏油への引火。火災は他の海難種類に比較して非救助率が一番高いことを考えると、外部腐食要因が比較的少ない機関室といえども、配管系は深刻に考えなければならない。

 

 

 

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