やせ馬のひずみ取りは、Fig.7.96に示すようにスチフナーの裏側にできたふくれの上を二条連続して焼いていくが、相互の加熱位置があまり接近している場合は、適当な時間を置き、それぞれを十分冷却する方がよい。やせ馬が小さいときは、スチフナーの裏側を楕円運棒に準じて幅広く焼くか、あるいは二条を同時に焼く方法もある。この種の溶接ひずみは、比較的取りやすいものの一つであるが、焼いた位置がふくれの部分から外側にずれたりすると、Fig.7.96に示すように焼いたところが折れて新たな角変形を生じることがある。また、加熱すると、新しい凹凸を生じることがあるので、注意しなければならない48)。
Fig.7.97は、小組立の場合に生じたやせ馬を取る場合の点焼き順序である。押えビームを利用して、ひずみ箇所を平らに押えつけた後、骨の近くでひずみの少ない箇所から順に、中央に向かって点焼きする。この方法も鋼板のひずみ取りと同じであるが、アルミニウム合金板の場合、治工具を用いて必ずひずみ箇所を平らにしてから点焼きすることが重要である9)。また、Fig.7.98は、同じく置きビードによるひずみ取りを示し、ミグ溶接機を用いてビードを図示のように適当に置く方法である51)。ひずみの程度により、トライアンドエラーで置きビードのパターンを決めればよい。
加熱加圧法は、点焼きと槌打ちを重畳させる方法である。槌打ちは、その部分を叩き延ばすことになるので、加熱部を直接槌打ちすると、逆に凸状たるみをますます凸状にすることとなり、局部加熱によるひずみ取り効果(収縮)を相殺し、ひずみ取りの効果は、むしろ減少してしまうこともある。効果的な槌打ちは、Fig.7.99のように、まず、点焼き部の周囲を槌打ちして加圧していく。これによって加熱された部分が盛り上がってくる。つまり、収縮をこの部分に集めてしまうわけである。その後、点焼き部を軽く叩いて目立たない程度に凹入させる。それから点焼き部の表裏の温度差も少なくなった頃に、水を掛けて局部的に収縮させてたるみを取る。この方法は鋼船で用いられており、点焼きの位置、槌打ちの位置、水冷の時期など経験によって著しく能率的なひずみ取りができ、単なるお灸に比べ数分の一の工数で作業できる可能性を持つ49)といわれている。