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部材のひずみ取りで大切なのは、例えば、T又はI型となるように部材を仮付け溶接後、ひずみ取りに必要なストレートラインをウェブに丁寧に記すことである。ひずみ取りにおけるストレートラインの見方は、Fig.7.91に示すように、手順1]としてAB間に糸を張り、

a. 外側にストレートラインが出ている場合は、板(ウェブ)を焼く。

b. 内側にストレートラインが出ている場合は、フラットバー(フランジ)を焼く。

ことになる。次に、手順2]、3]のように糸を張って、曲がっている箇所を探せばよい。

アルミニウム合金船における部材のひずみ取りは、鋼船におけるのと全く同じと考えてよいが、

(1) アルミニウム合金は、熱伝導率が高いので加熱の熱集中をよくすること。

(2) 溶融温度が低いので、材料を溶かさないようにすること。

(3) 前出のTable 6.4に示した加熱限界温度に注意すること。特に、加工硬化材(質別H32)や熱処理材(同T5)では、温度管理に注意をすることが望ましい。

(4) 鋼材と比べて柔らかいから、傷を付けないようにする。したがって、当て板などを使用して機械的にひずみ取りをするときには、アルミニウム合金側に傷を付けないように、接する面には木材、ゴム板、又はボール紙などを挟むことが必要である。

これらについては文献48)の「アルミニウム合金の溶接ひずみ防止マニュアル」が有益であり、参照されることが望ましい、しかし、多くの労力と熟練を要し、特に加熱方法によるひずみ取りは経験を必要とする。したがって、以下においては基本的な事項のみを述べる。

ひずみ取りには、いろいろな方法があるが、次のように分類されている。

1) 機械的方法

槌打ち法

ピーニング法

ジャッキ圧法

2) 加熱加圧法

加熱冷却法

加熱加圧法

機械的方法は、主に伸ばすことによってひずみを取る方法と考えればよい。たとえば、Fig.7.92に示す槌打ち法のように動的な打撃を与えることによって変形させて矯正するか、Fig.7.93のようにジャッキかプレスによって静的荷重を与えて徐々に矯正し、必要あれば加熱方法を併用する。Fig.7.94(a)は、組み上げられた隔壁の大曲りを直す方法である。甲板と隔壁間に丸太ステーをかい、スチフナーを局部加熱しながらターンバックルを締めて矯正をする。Fig.7.94(b)のような曲がりは一般に少ないが、この図のように曲がっているときには、スチフナーの付け根の部分及び隔壁板面を加熱する。板面の加熱は、局部座屈を併発する恐れがあるので、軽くして繰り返すのがよい49)、*7.58。なお、ピーニング法は、はつり用のエヤーハンマに先端が鈍のたがねを取り付けて、スチフナーの付け根などを叩いてひずみを取るのであるが、アルミニウム合金の場合には例が少ない。

 

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Fig.7.91 ひずみ取りにおけるストレートラインの見方

 

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Fig.7.92 槌打ち法

 

*7.57 文献48)では、バーナはJIS B 6801(1985)“手動ガス溶接器”のB-0号かB-1号相当のもので、使用時の酸素圧は2.5〜3.5kgf/cm2、板厚3〜5mmに対しては火口径1.6mm(B250番)、ガス圧力0.1〜0.2kgf/cm2、板厚5〜8mmではそれぞれ3.0mm(B2000番)、0.3〜0.5kgf/cm2(ただし、酸素ガス圧力6〜7kgf/cm2)が例として示されている。

 

 

 

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