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Table 6.4 加熱曲げにおける加熱限界温度18)、19)、(1)

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注.

(1) 文献18)、19)及びその他の資料による。

(2) 母材の90%以上の強度を保持するか、300℃以上では加熱時間によって強度低下が起きる。

 

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Fig.6.12 部分加熱焼き17)

 

加熱曲げは、冷却方法として水を用いるが、加熱直後に水冷する場合には板の限界加熱温度に注意する必要があり、Table 6.4に示す温度を超えないようにする18)、19)。この温度以上では材料が変質するので、デジタル式表面温度計や測温チョーク*6.8を使用して加熱条件を設定することが望ましい。現場的には、炎を離して直ちに加熱面に杉材を擦り付けたとき、滑りが悪いと392℃、少し滑って薄く焦げ目が付けば440℃18)、又は酸素・アセチレンの青色の還元炎を板の表面に当てたとき、先端がピンク若しくはオレンジ色の炎に変化し始めた時の板表面温度はおおよそ350〜380℃以上というような判定方法もあり、後者は炎の色の変化が注意信号である。ガスバーナを手に持っての作業であるから再現性が劣る20)ので、5083合金の場合には300〜350℃を目標にして加熱するのがよい。

(2) 部分加熱焼き

部分加熱焼きは、一般にはプレス加工又はローラ加工後、横曲がりと縦曲がりを持つ板の場合に行い、板の周辺を加熱して成形する。Fig.6.12(a)は、鋼板における横曲がりと縦曲がりが同じ側で絞りの強い板の部分加熱焼きである17)。加熱板縁部の両端をジャッキで押え、その間を加熱して冷却する。加熱による膨張はジャッキで押えられるが、冷却に伴う収縮力は温度の低下とともに強くなり、ジャッキの抵抗を排除して収縮する。加熱冷却は、図のように内側から外側に順次行う。Fig.6.12(b)は、横曲がりに縦曲がりを付ける場合の例であるが、これらの作業は、経験に待つところが極めて多い。現場作業では、部分加熱焼きの代わりに切り割りをいれ、海老曲げをすることもある。

(3)点焼き加熱

点焼き加熱は、一般にはお灸と呼ばれている。これは、Fig.6.13に示す17)ように、板の一点を加熱し、冷却すると板が収縮する性質を利用したものであり、線状加熱のように角度の変化を求めるものではない。横曲がり、縦曲がりの強い、いわゆる、絞りの強い板に効果がある21)といわれているが、曲げ加工よりも、ひずみ取りに使われることが多い*6.9

 

6.2.4 外板の曲げ加工例

 

外板の曲げ加工は、前述のようにプレス又はローラ加工後、加熱曲げで仕上げ、二、三の例を次に示す。

 

*6.8 4.4.5で述べた商品名を「テンピルストック」又は「サーモメルト」と呼ばれる測温チョークを例にあげると、575〜932°F(302〜500℃)の範囲において50°Fごとに品揃えされている。塗布した線が溶ければ、指示されている温度より高い温度になっていると判定する。チョークを使用後は、十分に拭いとる必要がある。

 

*6.9 周辺が固定されている板の中央部が凹部となっている場合、凹部を点焼き加熱して水冷すれば、凹みは除去される。凸部となっているときは、逆に裏側から水冷すればよい。このひずみ取りには、かなりの経験と熟練を要する。例は、後章に譲る。

 

 

 

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