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Fig.5.37 5083-H112合金20mm板突合せ継手から採取した回転曲げ疲労試験片における最大気孔径の影響42)

 

余盛を削除した場合に、酸化物が共存していると、健全材の値(σmax(5×106)≒11kgf/mm2)より30%近く低下するので注意を要する。

クレータ割れ(crater cracking)が疲労強度に及ぼす影響についての資料は少ないが、健全材と比べて約10%程度低下する45)とみなせばよいようである。Table5.5は、幅45mmのAlZn4.5Mg1F35及びAlMgSiCu(6061-T6相当)合金2mm板ティグ溶接突合せ継手の表面中央にクレータ割れが位置する場合の、応力比R=0.1における疲労強度(応力振幅)σw(2×106)である。このクレータ割れは、溶接の進行を突然中止して発生させたもので、その後、溶接を再開させることによって継手を形成しており、クレータには酸化物が含まれている。

類似の余盛形状を持つクレータ割れなしの場合と比較して、AlZn4.5Mg1F35合金は引張強さで24%、疲労強度では30%近く、AlMgSiCu合金ではそれぞれ7%及び12%ほど、いずれも低い値を示している。このデータには、角変形(angular distortion)や目違い(さらに酸化物)の影響も含まれているので、これらを考慮して前述の約10%減という答になったようである*5.20。なお、き裂はクレータ割れから発生している。

 

*5.19 この実験では、疲労寿命の減少が気孔率にほぼ比例しているが、前述の曲げのS-Nデータや溶込み不足をもつTable4.19等から類推すると、傾向としては理解できるが、少し極端なようにも考えられる。

この実験では、シールドガス(He)中に水蒸気を添加することによって気孔率を変えた試験材を得ている。シールドガス中に水素、又は水蒸気を添加したり、開先面への油塗布等の方法によって、故意に気孔を導入すると、発生した気孔の大きさ、分布は自然発生の気孔とは異なり、また、ミクロ的な溶接金属の著しい劣化を招くから、試験評価にはこれらの点を留意する必要のあること38)も指摘されている。

 

*5.20 この文献45)における2mm板ティグ溶接継手の疲労強度に関する一連の実験結果では、最も影響を及ぼすのは余盛角度、次が目違い、角変形の順であり、DIN 29595 Part2等の規格における寸法許容範囲では、疲労強度の低下が40%程度まで生じることを指摘している。内部欠陥としての気孔やタングステンの巻込みは重要な因子とならず、体積率30%までの前者は疲労強度を20%まで低下させるが、後者は影響がない。また、余盛の削除は、表面に現れた気孔からき裂を発生するので推奨していない。

なお、5.4.4の角変形では、文献45)は薄板のデータなので省略したが、AlZn4.5Mg1F35合金板の応力比R=0.1の場合に4.2〜4.6゚の角変形を持つと、疲労強度(応力振幅)σw(2×106)が40〜50%低下している。これらより比較的滑らかな余盛形状で角変形が7゚、目違いが0.1mm(d/t=0.05)では、35%の低下で、かつ、実験点のばらつきがかなり大きい、という結果が得られている。

 

 

 

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