日本財団 図書館


021-1.gif

Fig.5.32 放射線透過試験で検出された融合不良をもつ5083合金板突合せ継手のS-N線図37)

 

余盛を削除すると、両者とも実験点のばらつきの範囲は大きくなるが、同様に差が認められなかった。ただし、融合不良材は欠陥から破壊を生じている。

021-2.gif

Fig.5.33は、各線図の実験点をJIS Z 3080(1976)超音波斜角探傷試験方法の等級分類(案)によって、融合不良の大きさlとの関係で整理したものである38)。前述のように、余盛ありの場合には止端の応力集中が優先するので、融合不良の影響を考慮する必要はない。余盛を削除するとFig.5.33(b)に示すように、疲労強度はlの影響を受けるが、等級分類2級(l<t/3,tは板厚)程度までは健全材(図中の●印)と差がほとんどないものとみなされる。3級(l<t/2)になると、25%程度の低下であるが、高サイクル域の実験点がない。ここで、この等級分類(案)と旧JIS Z 3105(1973)による放射線透過試験等級分類(A〜C級)との関係は明らかでないが、前者の3級は後者で明確に検出できるものであった。

 

5.4.3 気孔等

 

気孔が疲労強度に及ぼす影響は、大きさと量、位置等によってその程度が異なるが、通常の施工条件で生じる程度の気孔量で、かつ、余盛を削除しなければ、ほとんど影響がないとみなして差し支えない。例えば、前出のFig.4.63に、5083-O合金12mm板突合せ継手(余盛仕上げ、放射線透過試験等級分類は旧JIS Z 3105(1973)のA〜C級)の応力比R=0及び平均応力σm=10kgf/mm2のS-N線図39)を示したが、実験点は両者の場合とも等級分類A〜C級に関係なくばらつきの範囲内にあり、余盛止端の応力集中の方が優先している。同様な結果は、5083-O及び同-H12合金4mm板ミグ自動溶接継手の溶接のまま並びに余盛仕上げの平面曲げ疲労でも得られており40)、一例をFig.5.34に示した。

Fig.5.35は、同じく20mm板突合せ継手の例41)である。旧JIS Z 3105の放射線透過試験等級分類A級と、初層溶接を行うときにシールドガス(Ar)中にH2ガスを微量混合することによって気孔を発生させたB級*5.18について、余盛の有無における疲労き裂の発生位置が求められている。余盛ありの場合は前述と同様であるが、余盛を削除すると、き裂は主として表面近くの気孔或いは傷から発生して疲労強度を低下させる傾向がある。

したがって、余盛を削除した場合、表面に気孔等の欠陥のない健全材であれば母材(軟質)と同等もしくは若干低い疲労強度を示すが、気孔が表面、もしくは表面近くに内在すると、切欠効果のために疲労強度が低下する。Fig.5.36は、余盛を削除した5083-O合金6mm板突合せ継手(JlS Z 2341放射線透過試験等級分類1級。ただし、余盛削除後の板厚は5mm)について、表面に検出された気孔数とその大きさで区別した平面曲げS-Nデータ42)である。

 

*5.18 70゚V型開先、下向姿勢は表面3層、裏面1層溶接、立向姿勢は両面3層溶接である。等級分類B級の気孔の点数は、前者が9〜14点、後者ほ10〜11点であり、B級の範囲は4〜16点である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION