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また、a/b<0.4ではα<1となって、梁理論による板表面の曲げ応力よりも低くなり、この場合には余盛止端の応力集中率が疲労強度に影響することになる。板厚5mmの7N01系合金及び5083合金ミグ自動溶接小型試験片において、余盛を持つ場合の疲労強度は、溶込み不足が板厚の0.2〜0.5又は0.5程度あっても、健全材と比べて差が認められない、という結果53)と一致している。

 

(2) アンダカットと応力集中率

 

米国溶接協会規格ANSI/AWS D1.2-90の9.8で許容されるアンダカットの最大深さは、Table4.20に示すようである。鋼構造における主要部材も同様であり、同ANSI/AWS D1.1-90の9.25において、任意の荷重条件下で引張応力に直角な溶接の場合はアンダカットの深さを0.25mm以下、その他の場合には1.0mm以下と規定している。いずれも、静的構造物の場合と比べて、かなり厳しい数値を採用している*4.20

 

Table 4.20 アンダカットの最大深さ (ANSI/AWS D1.2-90,9.8,Quality of weld)

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実際の溶接施工では、深さ1mmを超えるアンダカットはないといわれているが、すみ肉溶接におけるアンダカットの応力集中率はかなり大きいので注意を要する。フランジとウェブが同じ板厚25.4mmで構成され、フランジの両端が溶接線方向に沿って固定されたT継手について、アンダカットの深さと応力集中率の関係が有限要素法と光弾性実験で検討されている54)。Fig.4.61(a)にモデルの形状と負荷方向を示すように、平面応力状態で、荷重がフランジ方向に平行又は角度θをもって負荷されたとき、フランジ側すみ肉止端(下側止端)並びにウェブ側すみ肉止端(上側止端)に生じる応力*4.21に対し、その位置にそれぞれアンダカットを持つ場合の応力との比を、応力集中率αとして求めている。アンダカットの形状は、*4.20で述べたように静的構造物を対象としたので、深さd=1.6mmと一定にして半径ρ'を0.8mm(U型)、1.6mm及び3.2mm(C型)と変えた場合と、ρ'=dとした半円型の2種類である。

 

*4.20 Table4.20は、動荷重(dynamically loaded)を受ける構造物の場合である。静荷重の場合は、同規格の8.8によると、部材の厚さ、応力の種類と溶接線に対する負荷方向によってアンダカットの最大値は変わるが、許容限界は1.60mm(1/16")である。

鋼構造の静荷重の場合には、アンダカットの最大値が部材の厚さとは無関係に1.60mmである。以下に述べる文献54)の応力集中率は、これを対象として検討したものである。

 

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Fig.4.61 T継手のアンダカットと応力集中率54)

 

 

 

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