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4.4.2 溶接施工と応力集中率

 

(1) 突合せ継手未溶着部の応力集中率

 

未溶着部(溶込み不足)の応力集中率については、板厚6.4〜15.9mmの開先加工なしの部分溶込み両面突合せ継手の断面形状から、板厚2b=25.4mm、余盛形状は高さh=7.62mmで半径26.42mmの上下対称の円弧状、未溶着部は長さ2aで幅0.1〜0.12mmのものが板厚中央に位置するものとして、a/bの値を変えて応力集中率を求めた光弾性実験51)がある。

Fig.4.60(a)は、引張りを受ける場合の未溶着部先端における応力集中率αであり、公称応力σ=P/2bt(Pは引張荷重、tは板幅)に対して求められている。a/bが0.2を超えると、未溶着部の長さがαに影響を及ぼす主因子となることが分かる。ただし、a/b<0.4では、未溶着部先端の形状が影響して、a/bとαの関係が二つに分かれる。下側の線は先端部が半円状、上側の線は矩形状の場合を示し、それぞれ広幅板の中央に円孔切欠(α=3)又は矩形切欠(α=4.6)をもつ場合の値に近づく。a/b≦0.2における未溶着部先端の最大応力は、幾分小さくなる傾向を持つが、未溶着部の長さにはほとんど関係がないといえよう。

次に、応力集中を余盛の中央、すなわち、未溶着部を含む断面で評価したのがFig.4.60(b)であり、この場合の応力集中率αnetは式(4.45)のようになる。

 

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ここに、σtipは式(4.46)で表される未溶着部先端の最大応力、αはFig.4.60(a)の値、Lは板厚中心からの余盛高さである。

 

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この場合、L/b=1.6、a/b=0.05〜0.741という条件を伴うが、αnetはa/bが0.2〜0.6の範囲では2.3とほぼ一定値となり、余盛の形状は疲労強度に影響を及ぼさないことになる。この解析結果は、Table4.19に示すDinsdaleらの開先なしによる溶込み不足の長さが板厚の25%未満で、かつ、断面積の7%以下であれば疲労強度にそれほど影響しない、という実験結果52)をある程度裏付けている。

Fig.4.60(c)は、曲げを受ける場合である。未溶着部先端の応力集中率αは、a/bに比例して大きくなるが、a/b>0.6で直線性が失われる。

 

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Fig.4.60 未溶着部の応力集中率51)

 

Table4.19 5083(NP5/6)-O合金板ミグ溶接突合せ継手(1)の溶込み不足と軸荷重疲労強度(R=0)52)

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注.(1) X型開先、溶加材はNG6合金。

(2) 試駿片負荷部の幅は、板厚6.4mmが32mm、同12.7mmが25mm、ただし、余盛削除は全て幅22mm、1,000cpm。

(3) 余盛フランク角は、板厚6.4mmが160゚、同12.7mmが120゚程度である。

(4) N=2×106

(5) 5.1mmに切削。

 

 

 

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