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なにもコンピュータ化が、職業の陳腐化を招くわけではない。ほぼ半世紀前まで、造船設計にも設計技師と製図工がいた。青写真で焼き付ける図面は、クロス:布幕に烏口で墨入れペン書の必要があったからである。やがて図面はトレース用紙に鉛筆書となり、製図工は不要になった。

ここからがコンピュータ化と違う。製図工は並べて設計技師になっていった。設計技師の手伝いの間に、図面判断や計算法を学ぶことができたのである。

 

さて、現代のCADオペレーター、単に手書きの清書であったり、操作マニュアル通りにキーを叩くだけの手先の仕事であったら、それはワープロ・オペレーターとなんら変わりがない。そのうち設計者が自分で操作するようになるから、それまでのはかない繋ぎの役目である。

また、コンピュータ・システムは、よくブラックボックスに譬えられる。中身が見えないし、学んでも判らないとの諦めの表現であろう。これでは困る。

 

だから、システム操作の表面に止まってほしくない。なぜ、そうするのか、なぜ、こんな結果が出るのか、いつも本質を考えてもらいたい。追及して腑に落ちなければシステムを疑うとよい。それがシステム改善のフィードバックになる。

改善されないシステムなら、もう時代に合わないから、取り替えればよい。人がシステムに縛り付けられることはない。

すでに前章の「数値現図の互換性」で見たように、システムの出入口:I/Fをいじれば、システムは入れ替えられる。そのI/Fフォマットも、デファクトスタンダード化やISO化が進んでくる。本書で事例とした外板システム:P-SHELLは、もう他の親の数値現図システムに組み込まれて使われている。

コンピュータ時代になって、手仕事のように先輩の見よう見まねで習うことはできなくなった。その代わり考えることで技術を学び、発見するのである。

こうした姿勢の作業者から、時代を拓く技術者が育ってくる。

 

考えてみると造船現図とは、実に面白い仕事である。この半世紀を眺めてきて、現図のあり方は激変している。それでもなお造船現図の本質は変わらないと言い切れる。作画現図だろうと数値現図だろうと、現図は造船における生産技術の大本なのである。

この造船現図指導書シリーズは、その本質を学ぼうとする人のために書かれている。

 

 

 

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