[適応制御]とは実情に合わせる制御の意味で、センシングによるフィードバックからロボット動作を補正する仕組みである。
このように数値現図の部品データから、小組立溶接ロボットが動くのである。
では、なぜ、こうまでして小組立てを自動化したいか。
人手による小組立材の完成形状は、よしんば延べ尺を適用して全体の溶接収縮を平均的にリカバーしても、溶接順序が違えば拘束が変わるから、同一にはならない。だが、これをロボット化すれば溶接は全く同一手順の繰返しとなるから、数値現図形状に一度"逆変形"を織込むことで高精度の再現性がえられ、以降の全工程を省力化できる。
逆変形量の特徴は、共通部材であれば1部材テストランの計測でえられ、それらの計測結果を蓄積して分析すれば、予測もつくようになり、やがてはFEM:有限要素法解析により理論解も求まるようになるであろう。
今なお現物合わせの残る工業は造船くらいのものであり、これを精度面から克服するのに、ロボット化が数値現図の次の追及点となる。
また、現在の造船の隅肉脚長は、溶接辺毎に指定で、例えばスティフナー中間部では過大である。やがてロボット化の進展で、連続溶接中の脚長を自在に変えれる施工法にすれば、溶接設計のリミットデザイン適用で、所要電力/溶着量/ひずみ取り作業を大幅に削減できよう。建造コストと地球環境の両面でメリットがある。
7.1.3 加熱曲げ自動化
近年での数値現図関連トピックスは、外板曲加工の自動化であろう。
[図7.1.6 自動線状加熱装置のハード構成]は、公表されている例"IHI-α"で、NC切断機のように、走行ガーダーに高周波誘導加熱コイルを搭載したキャリッジが組み合わされいて、ワークは上下する油圧シリンダーで支持され、加工形状はレーザー計測される。
NC加熱データは、外板曲面を細かなメッシュに分割し、折れと収縮をFEM計算で解析して求める。図のEWS:Engineering Work-Stationは、パソコンより高速の技術計算用コンピューター。
人手でなければガスバーナより強力な加熱源が運べる。
[図7.1.7 曲加工曲面と加熱方案]で、その妥当性が判る。
方案に示される実線/点線は加熱経路で、太い線ほどスピードが遅く加熱量が多い。つまり、長さ方向の細い線の流れは折加工の経路で、横曲りを与え、幅方向の左の太い実線経路は焼き抜の収縮加工で、縦曲げの反りを形づくる。同じく右の太い点線は、縦曲げ逆反りの加工である。