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海洋は、2次元・3次元空間として使えるため、広大なスペースがすぐ傍に開発を待っている。陸上では土地の所有権や各種の規制(例えば建築基準法等)で困難な高層建造物も、海上に浮かんだ人工都市(メガフロート)では可能であり、ここに物流や廃棄物の処理センターなど広大な土地とその周辺に緩衝空間を必要とする施設を設置する都市改造の拠点を作るような構想を提案すべきではないだろうか。

また、中小造船が参加可能な首都圏プロジェクトとして建設省が力を入れている『アクアハイウエイ構想』に付随する船舶の需要にも期待が込められている。河川の利用に供する船舶については、水深(喫水制限)、水上(橋桁までの水面高さ)、水路の狭さ、水流の早さ、制限水路での操縦性、曳き波の周辺への影響、騒音など多くの問題を抱えており、解決すべき課題が多い。

今後、建設省と運輸省が協力して取り組み、これがモーダルシフトの一端を担う船舶として位置づけられるように期待したい。

今後も、様々な需要を掘り起こすため、同業者・異業種の事業者と交流を促進し、上記のように関係省庁が連携しつつ、事業化のプラン作りを行う必要があり、そこでは技術情報支援センターの有する機能も有効に活用されることが期待される。

 

5-6 地域ビジョンの実施のための司令塔

 

本報告書おいて報告されていること以外にも、業界の抱える問題は誠に複雑であり、かなり長期的な取組と展望が必要である。

このため、今後の高度化する情報化を睨んで、まさに業界の様々な問題に立ち向かい得る造船・舶用工業技術情報支援センターをインターネット上に構築し、業界の有識者やOBをスペシャリスト(コーディネータ)として、現在から将来の展望に耐える『業界の司令塔』を築く努力が必要である。(図5-1-1)

事業は人が行うものであり、事業者の知恵と努力が成功に結びつくものであるとするなら、技術情報支援センターは人の知恵を如何に醸成するかの場を事業者に提供するものであり、現在の情報技術によって、革新的に時空を超えて、早く・簡単・的確に必要な助言や情報を交換できるものとして大きく期待できる。

技術情報支援センターの会員となる中小事業者は、受動的ではなく積極的にこれを上手く利用することが重要である。関東地区は、3,300万の首都圏人口があり、首都機能・本社機能により有能な人材が集中している。この人材を有効活用するこのセンターは計り知れない可能性を持っている。

現在の情報技術のアプリケーションソフトによって、これまで議論された諸問題に対し、技術情報支援センターを利用して議論することで解決の糸口にたどり着くことが期待される。

また、政府の財政・金融・社会改革はこれまで考えられた以上に急速に変革の実を挙げつつあり、今後の10年はこれに情報技術の革新が重なって複雑で多様な価値観を持った時代になるものと予想される。

この様な時代でも、現実の状況に対応しつつ、将来の姿を描きながら進む必要がある。

技術情報支援センターが業界の司令塔として、造船・舶用工業の業界にとって貴重な価値を生む場として、有効に利用されるように期待したい。

 

 

 

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