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5-3 情報化の視点

 

2-1-2において経済の歴史的視点について展望したが、これからの改革の中で生産性の向上(情報化による)が、わが国産業の大命題になると考えられる。

中小企業での情報化は、コンピュータによる生産管理、スケジュール管理、調達管理、設計管理及び加工切断の自動化などが考えられるが、先に述べたように、これらが専門家を不要とするシステムであることが重要である。また、簡便でいつでも各事業所の実状にあった変更や工夫ができるシステムであることが求められる。

この様な情報化を図ることによって、既にこれまでの造船業では考えられなかった状況が生じている。それは、若い女性が造船業の現場へ進出し始めていることである。NC切断機を導入するにあたって、部材の切断はほとんどその女性従業員に依存している事業所や、CAD、CAMを導入し、その運用を3人の女性従業員に任せている事業所が現れている。

自動溶接機の導入や塗装ロボットなどのコンピュータ化した自動機械を導入することで、今後は、女性や高齢者を中小造船業の現場にも適材適所で採用する可能性も高まってくる。また、仕事をパターン化すれば、高い生産性をもった中小事業者に最適な多能工の人材を創出できる。

しかし、現在中小事業者では、これらの情報化への取り組みも人材の不足で儘ならない。この根本的な問題を解決することが業界全体に課せられているが、これについては技術情報支援センターが大きな役割を果たすものと考えられる。そして、同センターに所属するスペシャリストがコーディネータとなって、中小企業に最適な情報化の方策を探っていく必要がある。

 

5-4 関東地区の中小造船業の展望

 

他方、関東地区の中小造船事業所の経営分析を行った4-1-5の内容を見ると、現在の収益は赤字であり、売上の伸びが見込めない状況下で、経費の削減が緊急の課題となっている。

・売り上げ-経費=営業利益/総資本===>-2%〜-4%

・営業利益-借入金利等=経常利益/総資本===>-4%〜-6%

赤字の埋め合わせに借入金が増えると、経常利益が更に減少するという悪循環に陥る。その対策としては、売上増加に踏み切るため内航船に焦点をあてると、西日本地区の造船事業所との激列な競争に巻き込まれざるを得ない。とはいえ、このまま東京湾内の船舶だけをマーケットとしていては、大きな改善は見込めない。

こうして見ると、経費の削減で体力をつけ、西日本の造船事業所に負けないようなコスト競争力を持つことがどうしても必要とされる。その具体的な内容としては、雨天や暑さ対策としての作業の屋内化、NC切断機の採用により、30%程度の時数削減が期待できるとともに、クレーンや電動車、フォークリフト、高所作業車の採用及びCO2溶接機の採用によって、20%程度の作業能率の向上を目指すべきであることを指摘している。

また、売上にならないアイドルが15〜20%あることも判明するとともに、ドックや上架の工期日数削減について段取りや社外工に関する改善の必要性が指摘され、これらは今後取り組むべき重要な課題となろう。

 

 

 

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