日本財団 図書館


(3) 低公害型推進機関の開発に係る課題

 

環境負荷の低減という観点から、今後低公害型の推進機関の開発が舶用工業界に強く求められると考えられるが、「低公害型高速船」の中で提案されたバッテリー駆動式の電動ウォータージェットはこれに対する一つの回答であると考えられる。

しかしながら、これに対応する高容量・長寿命のバッテリーは開発途上であり、また、舶用工業界単独での開発は困難であることから、異分野との協力が不可欠である。

当該分野に関しては、高度な自動制御装置を駆使したガソリンエンジンと電動モーターのハイブリッド車を開発した自動車業界や、新時代の動力源として期待される燃料電池の開発に関わる関連業界との連携を強化し、舶用工業界が持つ高度な技術を融合させるなど、積極的な事業展開が望まれる。

 

(4) 親水空間レジャーシステムの開発に係る課題

 

前出の貯木場の一部利用に代表されるように、利用率の低い海面が有効に利用できれば東京湾を中心にした親水空間レジャーシステムの整備が更に進むものと思われる。したがって、今後は既存の海面利用との利用調整を円滑に行い、他産業の利用に影響が生じない範囲内で海面利用の新たな可能性を探る必要がある。本件については、関係省庁・自治体の積極的な対応が望まれる。

他方、海洋レジャーの普及に伴い、プレジャーボートの海難事故や漁業者とのトラブルなどが急増していることから、海面利用や船舶航行のルールを周知徹底するとともに、新規需要の開拓という観点からは、座礁しても沈没しない構造のボートを開発するなど、既存の需要にとらわれない造船・舶用工業界の積極的な事業展開も望まれる。

 

(5) その他(漁船建造等の推進)

 

関東地区には多くの漁船造船事業所が存在しているが、新造船の建造には需要面で限界があると考えられるため、ここでは漁船建造のノウハウを生かせる他の船種に係る需要拡大方策の可能性について検討した。

漁船以外では、遊漁船やイルカ/ホエールウォッチ船などの需要が今後も伸びると考えられ、それぞれの目的に応じた設備を備えた船舶の建造で需要の拡大が期待できるものと考えられる。

特に遊漁船については、ゲームフィッシングの流行で若年層の参加人口が増加傾向にあり、子供や女性でも乗船しやすいトイレつきの船舶や、大型魚(カンパチ、キハダマグロなど)を対象として遠洋まで出漁する大型遊漁船などの事例があり、新たなニーズに対応して自ら積極的に需要拡大を図ることが望まれる。

他方、これら遊漁船やイルカ/ホエールウォッチ船の拠点となる漁港の整備については、平成4年度に水産庁から漁港の多目的利用に係る通達が出され、漁船以外の利用が認められるようになった。しかしながら、実際に遊覧船の離着岸の申請を行ったケースで、漁業関係者の同意は得られたにもかかわらず現地漁港管理事務所の了解が得られなかったことが指摘された。

したがって、今後は新造船の需要拡大の努力を払うのはもちろんのこと、その拠点となる漁港や港湾などの多目的利用を推進する施策の周知徹底が望まれる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION