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4-3 新規需要の開拓

 

4-3-1 検討の視点

 

現在、中小造船・舶用工業の業界は戦後最大という未曾有の不況の中にある。これはバブル不況に続くデフレの影響で、信用収縮・金融不安と規制緩和などの社会改革・ビッグバンによるグローバルスタンダードの要請が同時進行して先行きの不透明感が強いためと思われる。このため、不況を一時的と見るか構造的と見るかによって今後の取り組みが別れるものと考えられる。

しかし、いずれにしても現在の需給からすれば、これまでの建造量のみに頼っていては大幅な需給のアンバランスは避けられず大きな発展を望める環境にない。

幸い関東地区は首都圏として広大な人口と情報の集積地であり、首都圏の長所と欠点について研究し新たな需要を見出すことは、造船で培った海洋技術の発展と創造のために必要なことと考えられる。

本報告書では、都市型造船・舶用工業とのコンセプトを持って、需要の創造について検討を進めることとする。

 

4-3-2 新規需要開拓の方策

 

新規需要を開拓するために次のような方策が考えられる。

 

1]新技術・新製品の開発

従来の製品を陳腐化・非経済化するような新技術・新製品を開発する。最も効果が期待できる方策である。

 

2]新分野の製品の開発

従来の製品の周辺で、新分野の製品を開発する。

 

3]規制強化等に対応する製品の開発

CO2、窒素酸化物などの公害規制、騒音や省エネルギー・温暖化対策など世界情勢を先取りした製品を開発する。

 

4]異業種・異分野への進出

造船・舶用工業が有する技術ポテンシャルと設備を有効に生かせる異業種・異分野への進出を図る。

 

5]代替需要の促進

官公庁船などの代替需要の促進を働きかける。

 

6]首都圏大型プロジェクトのフォローアップ

首都圏における大型の海洋開発プロジェクトなどの動向をフォローアップをして、新規需要創出の可能性を探る。

 

7]情報ネットワークの活用

6]までの項目の関する情報を遅滞なく入手するために、国や大学、中小造船業界や大手造船業などからの情報入手の方策を確立する。これについては、4-2「中小・舶用工業技術情報支援センター」での検討成果に期待する。また、異業種交流も重要な情報源である。

 

8]早期の景気回復、公共投資増大、経済成長の持続

造船・舶用工業界の自助努力によるものではないが、業界の需要回復にもっとも影響を及ぼすものであり、政府や経済界の努力が望まれる。

 

 

 

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