日本財団 図書館


ここで2つの疑問点が出る。一つは売上が伸びない、または減少することは分かっていたはずであり、それの対策はどのように取られたのかということであり、二つ目は売上が減少すると予測されていたならば、もう一つの対策であるコストの引下げにはどの程度真剣に取り組んだのかということである。

表4-1-16では、売上高は現状設備などを前提にすると伸びないものとし、コストが変化した場合に損益分岐点が変わるかどうかを、以下の4つのケースで検討した。生産高には新造、修理、機器などの売上を含むが、計算上は無視して行った。

 

1]ケース1

材料費5%、現場人件費10%を削減したもので、損益分岐点は4,872百万円となり、生産高に対しては102.8%で、当初より8.4ポイント低下する。この削減率は決して無理なものではなく、内航船、小型外航船の新造修理の世界ではコストダウンのうちには入らない程度である。特に、材料費削減の効果は大きく、5%でも6,000万円のコストセーブになる。

 

2]ケース2

長期借入金のうち、5%は返済(70,167千円)するものとして、その時の損益分岐点を計算した。70,167千円返済するが、10,214千円の減価償却費があるので(一般管理費にも含まれているが、データがないので無視した)これはそのまま返済財源になるので、控除した残額を固定費に加算すればよい。税金も加味しなければならないが、繰越欠損があるので考慮していない。

損益分岐点は5,147百万円で生産高に対して108.6%となるが、当初割合よりは低い。

 

3]ケース3

更に進めて、外注費も材料費同様5%カットし、人件費はすべて10%カットとした。このケースでの損益分岐点は4,687百万円となり、初めて98.9%と100%を切ることになった。これが、各社で目指すべきコストダウンの目標でなければならなかったと思われる。

 

4]ケース4

ケース2と同様に返済を加味すると、損益分岐点は4,789百万円となり、それでも僅か1%上回るに過ぎない。

 

以上のように、造船業で生き残るためには、集約化の前に各社で合理化を進めなければならない。それには金額の大きい費目について5〜10%の幅で合理化を考えることが必要である。

 

(3) 近代化・合理化の進め方

 

1) 組織連携の強化

 

組織連携の強化としたが、これは協同組合を設立するというものではない。誰が中心になり、誰と誰がどのような役割を担うかということである。それと同時に、今後具体的な話を進めていく上で欠かせないのは、各社のデータをオープンにしてもらう必要があるということである。また、今後得た資料はすべてオープンにすることになるが、それを生かすも殺すも各社の姿勢、考え方によるということである。

場合によっては、そのために仕事を取られることもあるということも最初に了解しておくべきことである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION