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1] 業務提携

 

互いに独立して活動しているが、継続し、あるいは必要に応じて互いの弱点を補い、長所を伸ばしていく契約である。設計の委託、ブロックの委託、労働力の相互融通など全ての分野で可能であるが、中小企業ではよほどのことがないと同業者間での取引をしないこと、契約の終了またはお互いの合意で簡単に解消できることから中小企業間で大きなメリットを出しにくい。構造改善事業では成果が上がっていないが、これは単に名前を連ねる、税制、金融の恩典だけに関心が向いているためで、資本提携、人事交流もなく事業内容にも真剣さが足りないためである。

 

<メリット>

ア.業務提携参加者は独立して存在する

イ.設備、人員などの補充をせずに自社の欠点、弱点を相互補完できる

ウ.々が自社の得意分野を伸ばすことが出来る

エ.お互いの経営内容に干渉しないので、経営責任が明確になる

オ.生産委託をすることで自社設備を廃棄し身軽になれる

カ.お互いに不満があればいつでも解消できる

 

<デメリット>

ア.提携した部分についての主体性はなくなる

イ.弱い者同士の提携ではプラス面が出ないことが多い

ウ.借入金が多い、コストが高止まりしている場合などは役員人事の受入れ、資本参加も起きてくる

エ.弱い部門に在籍するものだけが移籍、整理の対象になり易い

 

2] 共同化

 

一部の設備(例えば乾ドック)を共同で使用することや、事業の一部(例えば購買)を共同で行うことによって構成員がメリットを得ようとするものであり、協同組合を設立して運営するのが一般的である。構成員はその利用を強制されないため(自らも同種の設備を持ち、同じ事業を行える。すなわち、メリットを認めなければ利用しなくともよい)、設備が遊び、事業は形だけになり易い。設備では、何社か仕事がぶつかった場合の調整が難しいということが度々ある。また、仕事が減少し利用度が減った場合に、借入返済財源をどうするかといった問題も生じ易い。協同組合法による出資制限、利用制限など制約が多いので、ある程度の規模を持った企業が行うのには向かない。

 

3] 協業化

 

共同化の弊害を無くすためにできた制度が協業化(協業組合制度)である。

協業化には一部協業と全部協業とがある。一部協業とは、新造船事業(営業から生産まで)だけ、船台等を利用した修繕だけ、ブロック加工(原図から組立まで)などのように事業の一部を協業組合で行うもので、組合員は協業組合で行う事業を自社ではできない。全部協業とは文字通り全てを協業組合で行うものである。したがって、この場合は会社の合併と同じ効果を持つ。異なるのは商法の適用はなく、協同組合法に近い法律が適用されることである。造船業では、島原と小名浜に事例があるが、協同組合法が根底にあるため制約が多く、主として零細企業向けの制度である。

また、その趣旨から購買のみといった設備を伴わないものは対象にならない。

 

 

 

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