日本財団 図書館


こうしたことから見ても、都市型造船事業所というポテンシャルのある地域特性に恵まれているということはあっても、まず、現状打開がなされなければならない。これは、他地区との競争にどのようにしたら勝てるのか、ということに尽きると考えられる。

 

(2) 集約化方策とその得失

 

1) 現状打開のための方策

 

ここで、関東地区の抱える問題点を整理すると以下のようになる。

1]船型が小さく隻数はかなりのテンポで減少している

2]船主にアピール出来る工期ではない

3]コスト的にも魅力がない

4]土地が狭く設備老朽化が目立つ

5]設計人員がいないに等しい

6]社外工を中心に高齢化が進んでいる

7]購入品ではかなり高いものを買っている

8]借入金が多すぎる

これら全部を、一挙に解決することが出来ないのは当然であるが、これらのうち2]、3]、7]、8]などは、まず個別事業所が最大限の努力を払わなければならないことは言うまでもない。しかし、2]、3]、7]は、協調しながらでも解決の道はある。このように集約化だけでは解決できないものもあること(特に8])を忘れてはならない。

ファッション性や先端性という特徴を持つ都市型産業のイメージを造船事業所にあてはめてみると、没頭して独自の、あるいは流行を追ったプレジャーボートを設計し、空調の利いた工場で生産するということになるが、現状では制約される要因が余りに多すぎて、企業として成り立たないことは既に証明されている。

大手造船事業所の子会社などがパトロールボート、消防艇などの官公庁船や小型客船などを建造しているが、都市型造船事業所であるからという理由ではなく、単に発注者が近いところで作らせたこと、スペースに合った仕事であったに過ぎないという客観的事実を認識しなければならない。

また、湾内には引き船建造造船事業所が多いが、年間建造隻数が少ないこと、船価に占める主機価格が大きく造船事業所の所掌範囲が小さいこと、更には引き船会社の多くは中核体が支配しておりフリーのマーケットと言い難かったことなどから、多くの内航船造船事業所にとって魅力ある仕事ではなかったからともいえよう。

ともかく、現状打開の方策としては、労働環境の悪いイメージを排除し、若年層が自ら積極的に就労するような仕事と職場を確保することが不可欠である。しかし、現状ではそれも一朝一夕にはなし得ないことも確かであり、今後計画的に実現を図るべきであろう。

 

2) 集約化等のメリット、デメリット

 

通常、集約化という場合には、業務提携、共同化、協業化、企業合同(出資新会社も含む)の4形態を指す。以下、それぞれの形態について考察した。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION