漁船の場合は、機関整備に必要以上の時間と費用をかけるのが普通であるが、修理期間については短期間に内容のある仕事をすることが必要であろう。
修理期間の短縮は、設備の効率面から当然推し進めるべきで、それは次の仕事の有無に関係なく行うべきものであり、それが修繕業のコストダウンの原点になる。
2] 資材費
鋼材価格は、ショット材で62〜96円となっており、SGPは110〜119円/Kとなっている。新造船用と修繕船用とでは、新造船ではまとめ買いできることから当然安いと考えられがちだが、瀬戸内地区では、修繕造船事業所でも新造船造船事業所と遜色ない値段で購入している。ただし、「関東地区ではヤードが狭くストック出来ない」、「鋼材そのものをほとんど使わない」などの理由のほか、「購入先が造船事業所向けの扱いが少ない」、「メーカー、一次問屋との価格交渉力がない」ことなどもその理由となろう。
鋼材ヤード、定盤が狭いことなどから鋼材サイズも小さすぎる。小型船でも9mの板を使うのは当たり前であり、歩留まりの向上、溶接長を少なくすることによって社外工価格を下げることにつなげなければならない。
3] 外注
今回は外注利用の実態にまで立ち至ることが出来なかったが、請負はもちろん、材料持ちの可否、他地区からの導入などあらゆる点から検討を加えるべきである。
6) 財務状況分析
財務諸表は調査対象の6社に提出してもらったが、今回は対象が関東地区の事業所だけのため、収益費用については6社の数値を用いたが、その他については特に断りのない限り5社の数値を用いて分析した結果である。
1] 収益性
企業の経営成績を総合的に示す総資本経営利益率(経営利益については表4-1-13を参照)は9年度△5.75%、10年度△4.42%で損失の幅は縮まったものの、2年連続の赤字であり、11年度も3社の数値から見ると損失が続く可能性が高い。
総資本の効率を示す総資本回転率は、9年度0.90回、10年度0.94回であるが、修繕主体の場合には1回転を越えることはほとんどない。それは、売上債権の回収が遅いため売上債権残高が大きい、船台等建物、構築物が投資の主体になるので償却期間が長く、簿価が小さくならない反面、売上中材料費の割合が小さいので売上が大きくならないことによる。ただし、関東地区では設備投資にあまり見るべきものがないため、1.05回位であっても不思議ではない。
売上高の効率を示す売上高経営利益率は、9年度△6.40%、10年度△4.08%、11年度上半期△14.35%で好転の兆しはない。売上高総利益率を6社で見ると、9年度10.37%、10年度9.04%、11年度上半期(3社)6.75%で毎期下がっている。修繕業ではこの比率が15%を切ったら収益力確保は難しい。
調査造船事業所における一つの傾向を見ると次のようになる。
新造船建造を行っているところについては、新造船売上が減ったときには赤字が増えて(黒字が減る)おり、修繕専業の場合には、ほとんど何も対策が取られていなければ利益が減少し(損失が増大し)、リストラが行われていればその範囲で利益が増える(赤字が減る)ということである。