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このような過程から、経営基盤が脆弱な都市部の中小造船業は、若年層の人材不足が深刻化かつ恒常化し、現業部門の作業員の平均年齢が他産業と比較して3〜4才高く、これら労働集団の高齢化が顕著である。これは、多くの熟練度を要する外板の曲げ作業や、機関整備などの特殊技能工の不足にも拍車をかけ、これが中小造船業の事業継承の危惧が懐疑されるゆえんである。

このため、事業継続に必要な若い人材を養成することが責務であるが、同時に希少となった特殊技能工の有効活用方策の検討も欠かせない。

人材育成に関しては、地域の基幹産業を支えるため、造船熟練工のOBを講師に迎え若年労働者などを対象とした人材育成の体制作りなどの方策について検討が行われたが、多種多様な産業が集積する都市部の中小造船業では困難な問題が多く、現時点で実施可能な方策としては、舶用関係団体が主催する各種講習会などへ積極的に参加させ、社内においては、熟練工の指導の下、地道な技能工養成に努めることである。

しかしながら、これらのことを実施するのでさえ、現下の事業経営・体制の実態では大変厳しい状況である。

したがって、まず継続的に人材の雇用・育成を可能とする事業の再生や活性化の方策を探求、実践することが求められる。なお、これは中小造船事業者自身の力量のみでは限界があるのも事実で、特殊技能工の公的資格制度導入をも考慮した各種公的支援制度の検討も欠かせない。

特殊技能工の有効活用については、短期的な課題として特殊技能工の融通にかかる人材バンクの設立が望まれるが、具体的な方策については、後述する「4-2 造船・舶用工業技術情報支援センター構想の実現」で詳細に検討した。

 

4-1-5 中小造船業の活性化策の検討

 

前述のとおり、関東地区中小造船業はわが国の景気低迷が長期化する中で、造船業の需給のアンバランスや従業員の高齢化などの問題も抱え、その業況はおろか事業の継承すら危惧される状況にある。

このような問題を解決するため、横須賀、三崎、横浜地区を対象として、造船業の現状、問題点を調査し、各造船事業者が所有する経営資源を効果的に活用する具体策について検討を行うケーススタディを実施した。

ケーススタディの実施にあたっては、関東地区の海域で稼働する船舶の船種、隻数などを念頭におき、対象造船事業者の敷地、造修能力、人材などの経営資源や売上、債務などの経営状況を精査し、それらの分析結果から最適な活性化の方策を検討した。

 

(1) 調査対象6社の現状

 

1) 売上の推移(表4-1-2)

造船部門の売上高は、平成7年度の6,578,025千円を100とすると、8年度94.0、9年度84.3と減少を続けているが、10年度は新造船が増えたことから87.5とやや盛り返し、5,756,251千円になった。

この間、修繕船の比率は、7年度より67.4%、72.2%、80.2%と高くなっており、10年度には69.4%に下がったが、11年度上半期には(4社)、81.7%と再び8割を占めている。 

 

 

 

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